講演情報

[P13-1-4]盲腸癌術後1年でS状結腸に孤発性転移をきたした一例

門間 聡子1, 田中 龍2, 柵山 直紀1, 伊藤 豪1, 佐田友 藍1, 愛甲 丞1, 馬場 啓介3, 朴 成和3, 太田 泰徳4, 志田 大1 (1.東京大学医科学研究所附属病院外科, 2.新宿つるかめクリニック消化器病センター, 3.東京大学医科学研究所附属病院腫瘍・総合内科, 4.東京大学医科学研究所附属病院病理診断科)
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【はじめに】結腸癌は肝,肺などに転移をきたすことが多いが,孤立性に結腸に転移することは稀である.今回,我々は盲腸癌術後にS状結腸に転移をきたした症例を経験したので報告する.
 【症例】57歳女性.便潜血陽性を機に下部内視鏡検査をうけ,盲腸に2型病変を認めたため手術目的に当院に紹介となった.ロボット支援結腸右半切除術,D3郭清を施行し,術後は合併症なく退院した.病理結果はT4a N2b M0 StageIIIcであり,術後補助化学療法としてCapeOX療法を半年間施行した.術前にCEAは26.8ng/ml,CA19-9は45.5U/mLと軽度上昇を認めていたが,術後は正常化した.しかし術後1年の血液検査ではCEAは15.2ng/ml,CEA137.7U/mlまで上昇していた.CTではS状結腸に腫瘤影を認めた.下部内視鏡検査では粘膜面に病変は認めず,壁外からの圧迫が疑われた.PET-CT検査ではS状結腸の腫瘤影に一致して集積を認めた.他に転移を示唆する異常集積は認めなかった.以上より,盲腸癌術後のS状結腸転移の診断でロボット支援S状結腸術,D3郭清を施行した.術中所見では明らかな腹膜播種は認めず,漿液性の腹水を少量認めた.腹水細胞診はClassIIIであった.病理所見では腫瘍は粘膜下層から漿膜下層にかけて認められるが,粘膜面への露出ははっきりしなかった.転移性腫瘍の所見であり,盲腸癌の転移として矛盾しないとの診断であった.また,郭清したリンパ節18個のうち,腫瘍近傍の郭清リンパ節に1つ転移を認めた.現在はU F T/U Z E L療法施行中であり,明らかな再発は認めていない.
【結論と考察】他臓器からの結腸転移は比較的稀であり,結腸癌の結腸転移はほとんど報告がない.今回のように孤発性の結腸転移については積極的な切除によって根治が可能と考える.また,リンパ節に転移していたことから,転移巣に対してある程度のリンパ節郭清を追加することが妥当であると考えられる.