講演情報
[R20-5]病変切除から8年9ヶ月後に局所再発を認めた直腸肛門部amelanotic melanomaの1例
香取 玲美1, 畠山 知昭1, 森岡 香1, 諏訪 雄亮2, 渡邉 純2 (1.畠山クリニック, 2.横浜市立大学附属病院市民総合医療センター)
はじめに:直腸肛門部悪性黒色腫は予後不良のことが多い比較的稀な疾患である.今回,便潜血陽性を契機に肉眼的には診断困難であったamelanotic melanomaの局所切除を行い,8年6ヶ月後に局所再発し再手術後,長期生存が得られている症例を経験したので報告する.症例:69歳,女性.主訴:便潜血陽性.既往歴:脂質異常症.経過:2010年11月,大腸内視鏡検査施行.直腸肛門部に頂部に浅い潰瘍を伴う肛門ポリープ様病変を認めた.同月,経肛門的直腸肛門部腫瘍切除施行.切除病変は20×12×18mm大,病理検査で悪性黒色腫の診断であった.肉眼的には黒色調を示さないamelanotic病変であったが,病理検査では一部にメラニン含有細胞を認めた.深部断端に取り切れていない可能性を考慮し,高次医療機関へ紹介.2011年2月,経肛門的直腸局所切除を追加施行,病理検査では明らかな腫瘍の残存は認めなかった.その後は大腸内視鏡検査を定期的に施行していたが明らかな局所再発は認めなかった.2019年8月の大腸内視鏡検査にて切除瘢痕部の横に色素沈着を伴う5mm大の小隆起を認めた.再度,高次医療機関へ紹介.2019年10月,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術施行.病理検査は悪性黒色腫,pTis,Ly0,V0,pPM0,pDM0,pRM0,pN0,M0,pStage0.腫瘍は肉眼的病変以外の部分でも重層扁平上皮の基底側を這うように増生し3カ所(20×15mm,10×9mm,2mm大)の腫瘍を認めた.2022年7月に大腸内視鏡検査,2023年7月にCTを行い,明らかな再発は認めていない.【考察】直腸肛門部悪性黒色腫は比較的稀な疾患であり,黒色調を呈さない低色素性あるいは無色素性黒色腫では診断に苦慮することが多い.自験例でも肉眼的には診断困難であり,切除後の病理検査にて診断が明らかとなった.追加切除では明らかな残存腫瘍は認めず,その後長期に無再発であったが,8年9ヶ月後に再発を認め,局所切除可能であったと判断されても長期の慎重なフォローアップが必要と考えられた.