講演情報
[P14-2-3]腹壁膿瘍形成を伴う上行結腸癌の手術後に多発性腹壁再発を認めたが,Pembrolizumabが著効した1例
植田 隆太, 竹山 廣志, 澤村 成美, 赤澤 英, 岡村 修 (市立吹田市民病院)
【はじめに】大腸癌が腹壁に浸潤し腹壁膿瘍を形成するケース,また再発形式として,腹壁再発のみを認めるケース,いずれも比較的稀とされる.今回,腹壁膿瘍形成を伴う上行結腸癌の根治切除術後に,多発性腹壁再発を認め,Pembrolizumabが著効した稀少な1例を経験したので報告する.【症例】86歳,女性.発熱と右下腹部痛の精査で施行されたCT検査で上行結腸癌による腹壁浸潤,腹壁内膿瘍形成が疑われ,入院となった.抗菌薬治療と経皮的穿刺ドレナージにて膿瘍を縮小し,ドレナージ後14日目に腹腔鏡下結腸右半切除術,腹壁合併切除を施行した.術中所見では上行結腸の腫瘍が右腹壁に固定されており,膿瘍腔を開放しないように腹直筋・腹横筋・内腹斜筋を切除標本側に含む形で合併切除を施行した.原発巣は横行結腸へ浸潤しており,横行結腸まで含めて切除を行った.術後病理診断では原発巣が横行結腸粘膜面に露出していたが,腹壁剥離面や腹壁の骨格筋束への浸潤は認めず,pT4b(横行結腸)pN1a cM0 pStageIIIcの診断となった.また,膿瘍穿刺液の細胞診でも悪性所見は認めなかった.術後経過は良好で腹壁切除に伴う合併症もなく,術後9日で退院可能となった.その後外来にて経過観察していたが,術後5ヶ月で撮像したCT検査で腹壁に多発する再発腫瘤が認められた.高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)大腸癌であったため,1次治療としてPembrolizumabでの治療を開始した.4コース終了時点での評価CT検査では,腹壁腫瘤がほぼ消失している状態となり,他に新規再発病変の出現なく,PRの判定となった.現在も外来にてPembrolizumabでの治療を継続し腫瘍の縮小・PRを維持している.【考察】進行大腸癌の腹壁浸潤により腹壁膿瘍を形成した症例では,術前にドレナージで膿瘍を縮小させることで,腹壁切除範囲の縮小が可能となり,また膿瘍縮小により腹腔内スペースの確保も期待でき,手術操作が行いやすくなると考えられた.MSI-H大腸癌はガイドラインの推奨通り,免疫チェックポイント阻害薬が著効する症例が多く,高齢者でも投与可能な全身状態であれば1次治療から積極的に使用を考慮するべきと考えられた.