講演情報
[P23-2-6]当院における経肛門的直腸異物20症例の検討
安藤 秀一郎, 筒山 将之, 大重 英昭, 岩崎 真由子, 村田 仁美, 袴田 紘史, 北條 由実子, 岩田 尚樹, 櫻井 俊輔, 古川 翠, 稲石 貴弘, 間下 直樹, 小林 大介, 野田 純代, 杉本 博行, 望月 能成 (小牧市民病院外科)
経肛門的直腸異物は主に性的嗜好などが原因で肛門より異物が挿入され抜去困難となったものである.経肛門的直腸異物の多くは無麻酔下では摘出困難であっても,麻酔下で肛門括約筋を弛緩させることで経肛門的に摘出することができるが,稀に巨大な異物や骨盤内に固定されている症例では摘出に難渋することもある.今回2008年1月から2023年12月までの16年間に当院で経験した経肛門的直腸異物症例20例を対象とし,臨床的特徴や摘出方法について検討を行った.男性19例,女性1例,年齢中央値60歳(範囲18-90歳),主訴は摘出困難17例と最も多く,挿入動機は性的嗜好11例,排便誘導目的が4例,転倒時など誤って挿入されたものが3例,暴力行為が1例であった.挿入された異物は性的玩具が8例,ビンや缶などの容器が5例,食品が2例,その他5例で,20例中12例が円筒の形状であった.摘出方法は腰椎麻酔下経肛門的摘出が7例,無麻酔下経肛門的摘出が5例,自然排泄が3例,内視鏡下経肛門的摘出が2例,全身麻酔下経肛門的摘出術が1例,全身麻酔下開腹腸管切除が1例であり,無麻酔で経肛門的に摘除できなかった症例の多くは腰椎麻酔下で肛門括約筋を弛緩させることで摘除が可能であった.開腹下に腸管切除を要した1例は,短径7cmの円筒状異物の内部にS状結腸が重積した上で骨盤内に固定されており,腸管穿孔も伴っていたため腸管を切開して異物を摘除し,腸管の浮腫や挫滅も強かったためHartmann手術を施行した.摘出後に遅発性穿孔や消化管出血を来した症例は認めなかった.経肛門的直腸異物で挿入される異物は,性的玩具や日常生活に関連したものなど多岐に渡り,症例によって異物の大きさや形状,材質などが異なる.異物摘出に際しては処置前に十分な問診と身体診察,画像検査によって腸管穿孔の有無,骨盤内での異物の位置や向きなどを総合的に判断し,各々の症例で適切な摘出方法を選択することが必要であると考えられる.