講演情報

[O6-4]当院における体腔内吻合の現状と治療成績の検討

岩田 浩義, 浅井 慶子, 久万田 優佳, 唐崎 秀則, 橋本 道紀, 稲葉 聡 (JA北海道厚生連遠軽厚生病院外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【はじめに】腹腔鏡下結腸切除術における体腔内吻合は,術後の疼痛軽減や早期腸管機能回復,授動範囲の短縮などのメリットから本邦でも普及が進んでいる.当院でも2021年4月から導入した.当院は症例数が多くないことから基本的には体腔内吻合を第一選択としている.今回,当院における体腔内吻合の現状と治療成績を検討したので報告する.【対象】2021年4月1日から2024年3月31日の間に,当院での腹腔鏡下結腸切除術において体腔内吻合を施行した30例を対象に後ろ向きの検討を行った.【結果】対象症例の年齢中央値は74(90-41)歳,男女比は16:14であった.BMI中央値は23.1(16.5-31.6)kg/m2,術前Hb/Albの中央値はそれぞれ12.3(7.5-16.7)/3.5(2.1-5.0)g/dLであった.部位は右側結腸27例,左側結腸3例,右側結腸のうち3例は良性疾患であった.当院では執刀医が4人で,手術時間と吻合時間の中央値はそれぞれ292(126-477)/23(10-62)分であった.術後食事開始日数中央値は3(2-10)日,在院日数の中央値は10(7-39)日であった.Clavien-Dindo分類III以上の合併症を2例認め,いずれも縫合不全であった.表層SSIが1例あった,術中著しい体腔内汚染を伴った症例3例での感染性合併症を認めなかった.別の1例で術後7ヶ月に腹膜播種再発,8ヶ月での原病死を認めたが,体腔内汚染を伴った症例も含むほかの悪性疾患26例は,局所再発なく生存中である.【考察】術者の入れ替わりも激しい当院では症例の選別なく体腔内吻合を施行してきたが,合併症も多くなく安全に導入できている.また,体腔内吻合は腹腔内汚染や播種再発のリスクが懸念されており,当院でも吻合時に多量の腸管内容物が漏出して腹腔内汚染を経験したが,腹腔内膿瘍を認めた症例はなく,腹膜再発も原発巣切除を目的としてD1郭清とした症例1例のみであった.体腔内吻合でも長期的な予後は期待できる考えており,今後さらなる観察と症例の蓄積を継続する.