講演情報

[R14-6]80歳以上の超高齢者に対する大腸癌化学療法の検討

笹生 和宏, 小森 孝通, 内山 優史, 福永 睦 (兵庫県立西宮病院)
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【背景】 近年,日本では高齢者の人口が増加傾向であり,2022年には75歳以上の後期高齢者が全人口の15.5%に達した.また,85歳以上の超後期高齢者が全人口の5.3%に達している.切除不能転移・再発大腸癌に対する化学療法の有用性も明らかであるが,高齢者に対する化学療法は議論があり,化学療法の対象年齢は上昇傾向である.【対象・目的】 2016年1月から2023年5月までの間,当科で施行した切除・非切除を含め,大腸癌に対し手術を施行した症例のうち,70歳以上の503例を対象とし,高齢者に対する大腸癌化学療法の効果を検討することとした.【結果】 全体の年齢の中央値は79歳(範囲:70−98歳),性別は男性/女性:253/250,BMIの中央値は21.8(範囲:13.3-36.2),ASA-PSは1/2/3/4:14/257/215/17,癌占拠部位はV/C/A/T/D/S/R/P:6/46/98/60/23/132/125/3であった.70歳以上79歳以下(以下,高齢者群)は272例,80歳以上(以下,超高齢者群)は231例であった.Stage3の高齢者群では術後補助化学療法を施行されたのは42例(58.3%)に対し,超高齢者群では8例(11.6%)のみであった(p<0.001).レジメンでオキサリプラチンまたはイリノテカンを使用されたのは,高齢者群で83%,超高齢者群で51%であった.超高齢者群において,無再発生存率は術後補助化学療法施行群(n=8)で47.6%であり,非施行群(n=61)で40.9%と有意な差は認めなかった(p=0.648).3年全生存率は術後補助化学療法施行群(n=8)で100%であったのに対して,非施行群では55.0%と低い傾向にあった(p=0.112).根治切除不能の進行大腸癌(Stage4,R2)に対する化学療法は,高齢者群(n=27)で20例(74.1%)に施行され,超高齢者群(n=23)では8例(34.8%)に施行された.化学療法を施行された高齢者群(n=20)vs 超高齢者群(n=8)で比較検討したところ,化学療法投与期間は(536日 vs. 294日,p=0.61)であり,最大併用薬剤数は1/2/3/4:2/3/13/2 vs 0/2/6/0であった.3年全生存率は高齢者群の52.1%であったのに対して,超高齢者群では25.0%と有意に低かった(p=0.018).【結語】 80歳以上の高齢者であっても,化学療法が施行可能な状態であれば,化学療法施行にて予後の延長が期待できる.