講演情報

[O25-5]非ハイボリュームセンターにおける腹腔鏡下直腸縫合固定術の手術手技と短期成績について

熊野 健二郎, 島原 実理, 延永 裕太, 環 文乃, 柳原 飛翔, 赤井 正明, 杭瀬 崇, 丸山 昌伸, 松村 年久, 山野 寿久, 高木 章司, 池田 英二 (岡山赤十字病院消化器外科)
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【背景】
直腸脱は高齢女性に多く,社会の高齢化にともない増加傾向にある.診断治療はハイボリュームセンターなどの専門施設で行う事が望ましいが,合併症を抱え,移動困難な患者も多く,地域完結型の治療ニーズがある.腹腔鏡下直腸縫合固定術(Laparoscopic suture rectopexy)は,低侵襲かつシンプルな術式であり,どの施設においても施行可能な標準術式と成り得る.
対象・方法】
当科で行っている腹腔鏡下直腸縫合固定術の手技について提示する.
全身麻酔下,砕石位で臍部にカメラポートを挿入し,術者と助手用のポートをスクエア型に配置した5ポート(右下腹部は12mmポート)で行う.子宮の吊り上げ固定を行う.内側アプローチで,直腸後腔に入り,尾側の剥離を行う.直腸後面は直腸固有筋膜を温存し,肛門挙筋が露出するまで十分行っておく.排便機能温存のため,右側面の剥離は側方靭帯手前までとし,腹膜切開を右側から腹膜反転部,さらに左側に連続して行う.左側面の腹膜切開や剥離は行わない.以上で剥離操作を完了する.腹膜反転部に近い上部直腸を仙骨岬角まで引き上げ,直腸の固定部を決定し,3-0吸収糸で腸間膜にマーキングしておく.下腹神経,正中仙骨静脈の損傷に注意して,仙骨岬角の骨膜を右側で十分露出させる.色違いの2‐0非吸収糸を骨膜,直腸前壁の漿膜筋層の順に確実に2針かけ,体外結紮(Roeder knot)で固定を行う.腹膜閉鎖は行なわない.
2017年7月から2024年3月までに,直腸脱に対して腹腔鏡下直腸縫合固定術を行なった連続11症例を対象とし,後方視的に術式の妥当性を検討した.
結果】
全例女性.平均年齢:80.9歳,平均BMI:21.7,平均脱出長:4cm.平均手術時間と出血量はそれぞれ171分と4.5ml.平均術後在院日数は6.1日.入院中の合併症を認めなかった.術後観察期間の中央値は28日で,再発症例はなかった.
【結語】
腹腔鏡下直腸縫合固定術は,小ない症例数でも習得可能な術式で,安全かつ低侵襲であり,合併症や再発率の低さからも,直腸脱治療の第一選択と成り得ると考えられた.