講演情報

[O1-4]当院における直腸癌術後再発に対する重粒子線治療と治療成績

深瀬 正彦, 須藤 剛, 本荘 美菜子, 渡部 雅崇, 榎田 会生, 安田 英弘, 半沢 光, 内藤 覚, 佐藤 圭佑 (山形県立中央病院外科)
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【背景】直腸癌の再発病変に対しては積極的な切除が行われる一方,2022年より重粒子線治療が保険適応となり有望な治療選択肢となっている.局所制御に期待が寄せられる一方,遅発性の合併症の報告も散見されている.当院で重粒子線治療を受けた患者の治療成績を検討した.
 【対象】2012年から2023年にかけて当院で直腸癌に対して原発巣切除を行った1125例のうち,再発,転移病変に対して重粒子線治療を行った14症例を対象とし後方視的に検討した.
 【結果】年齢中央値は初回手術時60歳,男性7例,女性7例.術式はISR3例,SLAR2例,直腸前方切除5例,直腸切断2例に行われ,術後合併症として1例に縫合不全(CD gradeIIIa)を認めた.進行度はstageI/II/III/IV:3/1/8/2であった.同時性遠隔転移のあった2例以外はR0切除が行われており,剥離面陰性であった.再発部位は骨盤内局所9例,肝3例,肺2例であり,術後再発までの期間中央値は11か月であった.重粒子線治療は保険適応前の症例は先進医療として行われ,肺,肝に対しては60Gy/4回,局所再発に対しては70.4-75Gy/16-25回を施行した.重粒子線後の1年局所制御率は68.4%であり,3年生存率は53.6%であった.照射後局所再発は4例に認めたが,切除が行われたのは1例のみであった.また,照射部位以外の遠隔転移再発は6例(42.8%)に認めており,肺転移5例,肝転移1例であった.一方,照射に由来すると考えられる合併症は4例に認めていた.侵襲的処置を要したのは照射7か月後に直腸穿孔を来し,緊急手術を要した症例,照射3年2か月後に骨盤内膿瘍を来しCTガイド下ドレナージを要した症例であった.保存的に加療を行った症例では膀胱穿通を伴う骨盤内膿瘍,照射部に肺膿瘍を形成した症例を認めた.【考察】直腸癌術後再発に対する重粒子線治療は局所コントロールが比較的良好であるものの遠隔転移として肺転移再発を多く認めた.照射後期間が空いての膿瘍形成や穿孔例もあり,適応の判断や照射後のfollowは慎重を期す必要がある.