講演情報

[PD4-3]閉塞性大腸癌に対するBridge to surgery目的の大腸ステントによる栄養状態改善と治療成績の検討

北川 隆洋1, 諏訪 勝仁1, 力石 健太郎1, 榎本 浩也1, 牛込 琢郎1, 岡本 友好1, 衛藤 謙2 (1.東京慈恵会医科大学附属第三病院外科, 2.東京慈恵会医科大学附属病院外科)
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目的:Bridge to surgery(BTS)目的のself-expandable metallic stent(SEMS)がもたらす周術期栄養状態の改善と治療成績に関して,経肛門イレウス管(transanal drainage tube:TDT)を対照に検討する.
方法:2014年5月から2024年2月までに当院で閉塞性大腸癌に対してBTS目的でSEMS留置を行った48例とTDT留置を行った16例を対象とし,栄養指標,手術成績に関して後方視的に検討した.栄養指標に関しては,Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)とPrognostic Nutritional Index(PNI)を評価した.
結果:両群間の年齢,性別,ASA-PS,Stageに差は認めなかった.腫瘍占拠部位はSEMS群が左側33例,右側15例であるのに対して,TDT群は全て左側であった(P=0.0069).腸管減圧後の大腸閉塞スコア(CROSS)は,SEMS群で1:1例,2:1例,3:1例,4:45例,TDT群で1:10例,2:6例であり,SEMS群で経口摂取良好であった.GNRIについては,手術時と腸管減圧時の差(SEMS群 vs. TDT群)は,-4.02±7.13 vs. -8.60±3.94(P=0.0305)であり,PNIについては,手術時と腸管減圧時の差(SEMS群 vs. TDT群)は,-0.94±6.14 vs. -5.44±3.54(P=0.0056)であり,SEMS群でGNRIとPNIの低下が有意に少なかった.腸管減圧に伴う有害事象は,SEMS群のうち2例で再閉塞,2例で逸脱を認め,TDT群のうち2例で遅発性穿孔を認めた.SEMS群は47例で腸管吻合可能であったが,TDT群で腸管吻合可能であったのは9例のみであった(P=0.0001).SEMS群に縫合不全を4例認めたが,再手術で人工肛門造設が必要になったのは1例のみであった.腹腔鏡下手術率(SEMS群 vs. TDT群)は,87.5% vs. 37.5%であり(P<0.0001),術後在院日数(SEMS群 vs. TDT群)は11[5-74]日 vs. 15.5[7-55]日であった(P=0.0172).術後3年以上追跡できた症例はSEMS群22例,TDT群14例であったが,3年全生存率(SEMS群 vs. TDT群)は59.09% vs. 71.43%であり差は無かった(P=0.5013).StageIIおよびIIIの症例で術後再発を認めた症例はSEMS群で14/34例,TDT群で3/10例であり,差は認めなかった(P=0.7161).
結語:閉塞性大腸癌に対するSEMS留置は栄養状態改善とそれに伴う短期成績の向上に寄与していると考えられた.長期成績の悪化も認めず,閉塞性大腸癌に対するSEMSは有用と考えられる.