講演情報

[R5-6]直腸切除術後の縫合不全低減を目指した全方位的対策と効果に関する検証

辻仲 眞康1, 三浦 智也1, 佐藤 好宏1, 北村 洋1, 近藤 裕哉1, 藤村 敏行1, 岩田 典人1, 鈴木 法彦1, 澤田 健太郎1, 三田村 篤1, 長嶋 信太朗2, 山家 研一郎2, 桜井 博仁2, 近藤 典子2, 高見 一弘2, 山本 久仁治2, 中野 徹1, 片寄 友2, 柴田 近1 (1.東北医科薬科大学消化器外科, 2.東北医科薬科大学肝胆膵外科)
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【背景】直腸切除術後の縫合不全(AL)は最も重篤な合併症の一つである.我が国におけるALの頻度は9.4%(NCD database:last accessed 2024/4/30)と少なくなく,患者の機会損失やQOLの低下,術後の排便障害をきたすほか,癌特異的生存率を低下させる要因ともなり得る.また,ALの発生により在院日数が延長し病床利用率が低下する結果,医療経済的な損失にもつながる.ALの原因は大別して患者因子,腫瘍因子,手術因子に分類されるが,近年は手術器材やプラットフォームに関する技術革新が目覚ましく,それらがALの低減に寄与するか否かを検証することは有益であると考える.
【方法】2017年1月から2024年4月までの期間に,当院で直腸切除術が施行された症例を対象とした.ALの予防対策として,腫瘍因子(術前治療によるdownstaging等),手術因子(適切な手術アプローチ,吻合部の緊張緩和,直視やICG蛍光法による腸管血流確認,経肛門・経腹ドレーン挿入,機械的・化学的前処置,腸管切離法,縫合・吻合器材の新規導入,術中内視鏡による評価等)を中心に対策を行ってきた.患者因子,腫瘍因子,手術因子とAL発生との相関について解析した.
【結果】150例が対象に含まれ,ALは11例(7.3%)に発生した.単変量解析において,「電動吻合器使用」が唯一ALの低減に寄与した(P=0.037).その他,「年齢75歳未満」(P=0.068),「深達度pT3以深」(P=0.099),「男性」(P=0.113),「スコープ不通過」(P=0.14)等がALの弱い増加傾向を示した.その他,BMI,腫瘍占拠部位(RS/Ra/Rb),糖尿病,抗血栓薬服薬,一時的ストーマ造設,ICG使用,手術アプローチ(開腹/腹腔鏡/ロボット支援)等はAL発生に有意に関与しなかった.その一方で,直近5年間のAL発生頻度は15%,14%,9.1%,4.0%,0と経時的に減少していた.
【結論】
直腸切除術後のAL低減に有意に寄与した因子として,手術器材の改良が挙げられた.この成果は単一の取り組みに因るものではなく,患者・腫瘍・手術因子のすべてを考慮した全方位的な対策 “bundle”的な介入の結果とも考えられる.当院におけるAL低減対策の変遷とともに,現在行っている工夫に関しても動画を交えて提示する.