講演情報

[P15-2-5]Clostridioides difficile腸炎の診断精度を上げるために

根本 夕夏子1, 渡辺 早紀1,2, 村上 貴寛1,2, 内田 久美子1, 堀江 義政1,2, 木村 晴1, 中村 文彦1, 石井 健太郎1 (1.総合病院厚生中央病院消化器病センター(内科), 2.東邦大学医療センター大橋病院消化器内科)
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【目的】Clostridioides difficile 腸炎(CDI)は,偏性嫌気性グラム陽性桿菌であるClostridioides difficile(CD)によって引き起こされる腸炎である.CDI発症には,外科手術後,プロトンポンプ阻害薬,高齢者,低栄養,糖尿病,慢性腎不全,炎症性腸疾患,免疫不全などがリスク因子とされている.CDIの典型的な内視鏡所見は偽膜であり,CDIの重症例では典型的な内視鏡所見を来すが,内視鏡的所見では,診断が困難なものも多い.一般市中病院におけるCDIの現況につき検討する.
【対象】当院で2019年4月から2024年3月までに下痢や発熱などを呈した症例に対し,CDI疑いでグルタミン酸脱水素酵素(GDH)とCDトキシンを同時に検出する抗原検査キット,または便培養・腸管洗浄液培養検査を施行した.
【結果】CDIを疑って検査を施行した577例のうちCDIとして加療したのは72例(12.5%)であった.CDIとして加療した症例の内訳は,GDH/CDトキシン検査の両者が陰性であった502例(87.0%)のうち6例(1.0%),GDH陽性/CDトキシン陰性であった39例(6.8%)のうち33例(5.7%),GDH/CDトキシンの両者が陽性またはCDトキシン検査が陽性であった30例(5.2%),便培養または腸管洗浄液培養でCD陽性であった6例(1.0%)のうち3例であった.GDH陽性/CDトキシン陰性であった39例のうちの6例,および培養検査でCD陽性であった6例のうちの3例,計9例は保菌者と考えられた.
【結語】偽膜を呈さない場合,内視鏡所見のみでCDIを診断することは容易ではない.CDトキシン陰性患者においても7%弱の治療必要な患者が存在しており抗菌薬投与歴などの病歴,背景疾患,発症リスクなどを組み合わせて診断していく必要がある.