講演情報
[R2-3]高齢者における大腸穿孔症例に対する予後因子の臨床学的特徴の検討
川村 崇文1, 原田 岳1, 小関 海都1, 一瀨 健太1, 見原 遥佑1, 河西 怜1, 清水 雄嗣1, 大菊 正人1, 稲葉 圭介1, 田村 浩章1, 平山 一久2, 落合 秀人1 (1.浜松医療センター消化器外科, 2.浜松医療センター臨床検査科)
【背景】大腸穿孔は重篤化しやすい疾患であり,医療進歩がなされた現在でも死亡率が高い病態である.本邦において高齢者と呼ばれる65歳以上の人口の割合は28.4%と上昇傾向であり,大腸穿孔で手術療法を受ける高齢者も増加していると思われる.今回予備能が低下している高齢者における大腸穿孔症例の予後に影響を与える臨床学的特徴の検討を行った.【対象】2015年1月から2024年3月までに術後縫合不全を除いた大腸穿孔症例全77症例のうち65歳以上である高齢者56症例を対象とした.【方法】周術期に死亡した死亡群と生存群の2群に分け比較検討を行った.年齢,ASA-PS,基礎疾患の有無など患者背景因子.WBC,PLT,Alb,乳酸値など術前の採血結果,手術時間,穿孔の原因,部位など周術期因子.術後合併症など術後因子などを後方視的に解析した.【結果】56症例中死亡群は8例で14%であった.2群間比較で年齢において死亡群が中央値で87.5歳(66-99),生存群が75歳(65-96)と優位に死亡群で年齢が高かった(p=0.0381).ASA-PSは死亡群で2は0%,3は75%,4は25%,生存群で2は46%,3は52%,4は2%と死亡群で高値であった(p=0.004).心疾患,透析疾患など併存疾患の有無での両群間の差はなかった.血液検査所見として術前の血小板の値が死亡群で20万(11~38),生存群で23万(6-56)と生存群で有意に高値であった(p=0.0445)が,その他乳酸値やWBC4000以下の割合など差はなかった.術後合併症としてDICの合併は死亡群で50%,生存群で8%(p=0.01),人工呼吸器装着率は死亡群で50%,生存群で13%(p=0.027)と死亡群で有意に高かった.【考察】今回の検討においてASA-PSが高い高齢者で予後が不良であった.これはASA-PSは手術リスクを予測する尺度ではないが,致死率が依然として高く緊急手術が必要な大腸穿孔症例において予後に関する一定の尺度になる可能性が示唆された.また術前の血小板低値と術後DICの合併が死亡群で多かったが,血小板は急性期DIC診断基準の指標の一つでありDICと関連していると考えられた.一般的に若年者よりも予備能が少ないとされる高齢者において大腸穿孔においてDICの合併は予後を左右する重要な因子であり,診断されれば早期に治療介入する必要があると考えられた.