講演情報

[P22-1-5]痔瘻と診断し手術を施行した肛門部子宮内膜症の1例

城後 友望子, 指山 浩志, 鈴木 綾, 黒崎 剛史, 佐々木 駿, 高野 竜太朗, 川村 敦子, 中山 洋, 安田 卓, 赤木 一成, 小池 淳一, 堤 修, 浜畑 幸弘 (辻仲病院柏の葉大腸・肛門外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【はじめに】異所性子宮内膜症は,子宮内膜が子宮外に発現・増殖し,疼痛などの症状を引き起こす疾患である.肛門部子宮内膜症は,分娩時の子宮内掻爬などにより剥離した子宮内膜片の会陰切開(裂傷)痕への機械的移植によって起こると考えられており,発生頻度は全子宮内膜症の0.3%程度と稀である.今回,痔瘻と診断し手術を施行した肛門部子宮内膜症の1例を経験したため報告する.
 【症例】52歳女性.2回の経膣分娩歴あり.7年前から繰り返す肛門痛(1回/月)を主訴に当院紹介受診.肛門痛と月経との関係は自覚なし.初診時肛門部左前方(1-2時方向)に硬結を触知し,肛門MRI検査では同部に一致して,T2強調画像で高信号を呈する多房性の嚢胞性病変を認めた.肛門周囲膿瘍を疑い,局所麻酔下に切開し,多量の膿と血液を排出した.後日施行した肛門超音波検査では,12-2時方向に境界不明瞭な低エコー域を認め,1次口を1時とした低位筋間痔瘻と診断し,痔瘻根治術(シートン法)を施行した.術中所見にて硬結は膣壁へ及んでおり,可及的に切除したところ,硬結内部より古い血液様の液体成分の流出を認めた.切除標本は組織学的に子宮腺管及び子宮間質を認め,子宮内膜症と診断された.術後は膣壁の残存病変に対する加療のため,婦人科へ転科し,現在ホルモン療法中である.
 【考察】肛門部子宮内膜症は,肛門痛や硬結を生じることから,しばしば痔瘻や血栓性外痔核,膿皮症,粉瘤などの肛門疾患との鑑別が問題となり,本症例のように痔瘻と診断し外科的切除を施行された報告も散見される.診断においては,月経随伴症状の有無や会陰切開歴といった詳細な病歴聴取に加え,超音波やMRIなどの画像検査も有用であるとされており,若干の文献的考察を加えて報告する.