講演情報

[P14-2-5]Pembrolizumabにより病理学的完全奏功が得られた門脈腫瘍栓及び多発肝転移を伴うMSI-high結腸癌の1例

須田 光太郎, 鈴村 博史, 松本 健司, 笹倉 勇一, 吉川 貴久, 寺内 寿彰, 木全 大, 行澤 斉悟, 篠﨑 浩治 (済生会宇都宮病院外科)
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37歳,女性.2022年11月より心窩部痛を自覚し,検診にて便潜血陽性,肝機能障害を指摘され当院を紹介受診した.下部消化管内視鏡検査で上行結腸に60mm大の1型腫瘍を認め,生検でAdenocarcinomaを認めた.また,腹部超音波検査ならびに腹部造影CT検査で,肝S4に80mm大の門脈左枝へ浸潤する転移性肝腫瘍と,同じく肝S4に20mm大の転移性肝腫瘍を認め,さらに門脈左枝の起始部に30mm大の腫瘍性病変を認めた.以上より,門脈腫瘍栓および多発肝転移を伴う上行結腸癌 cT4aN1M1a(H3 GradeC),cStageIVaと診断した.腸管の閉塞症状はなく,全身化学療法(FOLFOX療法)を開始した.FOLFOX療法1コース施行後,RAS wild,BRAF陰性,MSI-highの診断が判明したため,Pembrolizumab単剤での全身化学療法へ変更した.Pembrolizumabを計9コース施行し,原発巣,肝転移巣および門脈腫瘍栓の著しい縮小を認めたため,原発巣および肝転移巣に対するconversion手術を施行した.原発巣の切除を先行とし,2023年5月に腹腔鏡下結腸右半切除術(D3郭清)を施行した.術後経過は良好で,第6病日に退院となった.病理検査では腫瘍細胞の残存を認めず,治療効果判定はGrade 3であった.Pembrolizumabを再開し計6コース施行後,二期的に肝転移巣を切除とし,原発巣切除から術後6ヶ月に開腹肝左葉切除術を施行した.術中に門脈左枝の切除断端の迅速病理検査を行い,断端陰性を確認した.原発巣同様に術後経過は良好で,第6病日に退院となった.肝切除標本の病理検査では,原発巣同様に明らかな腫瘍細胞の残存を認めず,原発巣と肝転移巣の双方において病理組織学的な完全奏功(pCR)を認めた.術後は化学療法を行わず経過観察の方針とし,原発巣切除から術後8ヵ月,明らかな再発なく経過している.本症例では,門脈腫瘍栓および多発肝転移を伴うMSI-high結腸癌に対して,免疫チェックポイント阻害薬が奏功し,原発巣及び転移巣切除が施行でき,pCRが得られた.今回我々は,極めて稀な症例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.