講演情報

[P22-1-6]痔瘻癌40例の臨床病理学的特徴と治療成績

大城 泰平, 中林 瑠美, 新谷 裕美子, 操 佑樹, 井上 英美, 工代 哲也, 西尾 梨沙, 古川 聡美, 岡本 欣也, 山名 哲郎 (東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター)
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【目的】痔瘻癌は比較的稀な疾患で多数例を検討した報告は少ない.当施設における症例を集積し報告する.
【対象と方法】2013年1月から2023年6月までに経験した痔瘻癌40例を対象として臨床病理学的特徴と治療成績を検討した.クローン病罹患患者に発生した痔瘻癌は除外した.
【結果】患者年齢中央値は64歳(33-82歳),男性39例,女性1例であった.主な臨床症状は肛門部疼痛,排膿,出血,腫瘤形成,コロイドの流出であった.13例に10年以上の痔瘻罹患歴認め,痔瘻型はII型6例,III型12例,IV型15例,その他7例(肛門周囲膿瘍,潰瘍形成,痔瘻瘢痕等)であった.32例にMRI検査が実施され27例で悪性疾患を疑う画像所見を認めた.腰椎麻酔下・局所麻酔下生検,細胞診検査,内視鏡下生検を実施し36例で悪性腫瘍の診断に至った.4例は手術標本で痔瘻癌と診断された.
術式は直腸切断術(APR)38例,骨盤内臓全摘術2例であった.組織型は粘液癌27例,腺癌9例,扁平上皮癌4例,腫瘍径の中央値は60mm(12-175mm),壁深達度はMP 9例,A 19例,AI 22例,リンパ節転移を9例に認めた.病気分類(UICC-TNM)ではstage II 22例,stageIIIA 15例,stage IIIB 3例であった.R0切除は23例で達成され,R1切除は17例であった.
再発は11例に認められ,局所7例,鼠径リンパ節3例,肺転移2例,肝転移1例であった.再発までの期間は中央値で20ヶ月,4例は5年経過の後に再発した症例であった.全40例の長期予後は5年生存率90.6%,R0切除例の5年生存率は100%,R1切除例の5年生存率は77.4%であった.
【考察】本検討では臨床的,病理学的に発生起源が痔瘻瘻管と推定されるものを痔瘻癌と診断した.その結果,痔瘻病脳期間が10年未満の症例が多数存在した.診断確定にはコロイド細胞診,腰椎麻酔下生検が有用であった.複数回の生検でも悪性診断が得られない場合でも,離床経過やMRI画像で粘液貯留を伴う腫瘤形成など特徴的な所見を診断根拠として手術を実施した.
【結語】痔瘻癌の長期予後は比較的良好であったが,病理学的に剥離断端陽性例が多いこと,再発までの期間が長い症例が存在することを考慮し,長期のフォローアップが必要である.