講演情報
[R10-6]直腸癌術後一時的小腸人工肛門でのhigh-output syndromeに対する柴苓湯の効果についての検討
楠 誓子, 植村 守, 関戸 悠紀, 竹田 充伸, 波多 豪, 浜部 敦史, 荻野 崇之, 三吉 範克, 江口 英利, 土岐 祐一郎 (大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学)
【目的】
下部直腸癌手術においては縫合不全の予防・軽減目的に,一時的人工肛門造設術を併施することがある.当院では小腸での人工肛門造設を原則としているが,high-output syndrome(HOS)がしばしば問題となる.小柴胡湯と五苓散の合剤である柴苓湯は,水瀉性下痢,急性胃腸炎,浮腫などに対して使用される.直腸癌術後一時的人工肛門造設症例に対して,術後に柴苓湯を使用し,HOSに対する効果について検討することとした.
【方法】
2022年2月から2024年4月までに当院で,直腸癌手術に一時的小腸人工肛門造設術を併施した症例を対象とした.炎症性腸疾患の併存症例を除外した57例について検討を行った.当院では,2022年10月より直腸切除術のクリニカルパスに柴苓湯を組み込んでおり,POD1の昼から1日あたり9gを3回に分割して処方された.柴苓湯の投与群(29例)と非投与群(28例)で成績を比較した.POD10までの小腸人工肛門の排液量が1日1500ml以上となった時点でHOSと診断した.
【結果】
投与群/非投与群の患者背景は,男性が18例(62.1%)/20例(71.4%),年齢の中央値(IQR)が65(55.5-74)歳/69.5(64.3-74)歳,Albの中央値(IQR)が4.1(3.9-4.5)g/dL/4.1(3.8-4.3)g/dL,BMIの中央値(IQR)が22.6(19.5-25.2)/22.6(20.6-23.5)と,患者背景に有意差を認めなかった.術後HOSと診断された症例は21例(36.8%)であった.HOSあり/なしは,柴苓湯非投与群で15例(53.6%)/13例(46.6%)であったのに対して,投与群で6例(20.7%)/23例(79.3%)であり,投与群で有意にHOSが少なかった(p=0.014).
【まとめ】
直腸癌手術に対する,一時的小腸人工肛門造設症例において,術後柴苓湯の投与は小腸人工肛門からの排液量を減少させた.柴苓湯はHOSに対しての効果が期待できる.
下部直腸癌手術においては縫合不全の予防・軽減目的に,一時的人工肛門造設術を併施することがある.当院では小腸での人工肛門造設を原則としているが,high-output syndrome(HOS)がしばしば問題となる.小柴胡湯と五苓散の合剤である柴苓湯は,水瀉性下痢,急性胃腸炎,浮腫などに対して使用される.直腸癌術後一時的人工肛門造設症例に対して,術後に柴苓湯を使用し,HOSに対する効果について検討することとした.
【方法】
2022年2月から2024年4月までに当院で,直腸癌手術に一時的小腸人工肛門造設術を併施した症例を対象とした.炎症性腸疾患の併存症例を除外した57例について検討を行った.当院では,2022年10月より直腸切除術のクリニカルパスに柴苓湯を組み込んでおり,POD1の昼から1日あたり9gを3回に分割して処方された.柴苓湯の投与群(29例)と非投与群(28例)で成績を比較した.POD10までの小腸人工肛門の排液量が1日1500ml以上となった時点でHOSと診断した.
【結果】
投与群/非投与群の患者背景は,男性が18例(62.1%)/20例(71.4%),年齢の中央値(IQR)が65(55.5-74)歳/69.5(64.3-74)歳,Albの中央値(IQR)が4.1(3.9-4.5)g/dL/4.1(3.8-4.3)g/dL,BMIの中央値(IQR)が22.6(19.5-25.2)/22.6(20.6-23.5)と,患者背景に有意差を認めなかった.術後HOSと診断された症例は21例(36.8%)であった.HOSあり/なしは,柴苓湯非投与群で15例(53.6%)/13例(46.6%)であったのに対して,投与群で6例(20.7%)/23例(79.3%)であり,投与群で有意にHOSが少なかった(p=0.014).
【まとめ】
直腸癌手術に対する,一時的小腸人工肛門造設症例において,術後柴苓湯の投与は小腸人工肛門からの排液量を減少させた.柴苓湯はHOSに対しての効果が期待できる.