講演情報

[P6-2-6]大腸癌根治切除例における,再発までの期間と術後補助化学療法との関連について

加藤 宏周, 岡林 剛史, 田中 優衣, 森田 覚, 茂田 浩平, 北川 雄光 (慶應義塾大学医学部外科学(一般・消化器))
PDFダウンロードPDFダウンロード
【背景・目的】大腸癌pStageII/IIIにおいて,補助化学療法は再発抑制目的に行われ予後改善に寄与すると報告されている.しかしながら再発までの期間に及ぼす影響に関する研究は乏しく,再発抑制効果については未だ不明な点が多い.今回われわれは補助化学療法と大腸癌根治切除後の再発までの期間との関連について明らかにすることを目的とした.【方法】当院および関連施設における大腸癌手術症例の多施設共同データベース(K-SEER)から,2015年1月~2016年12月の間にpStageII/III大腸癌に対して根治切除が行われた1876例のうち再発例405例を抽出し後方視的に解析を行った.主要評価項目は再発までの期間(TTR)とし,補助化学療法施行例と非施行例の2群間に分け比較した.【結果】年齢の平均値は69.9(標準偏差11.4)歳,男性の比率は225例(55.6%),pStageII/IIIはそれぞれ155例(38.3%)と250例(61.7%),TTRの平均値は16.2(13.0)ヶ月であった.pStageII/IIIの再発率は両群間で有意差を認めなかった[pStageII:補助化学療法施行例19.2%(41/214例)vs非施行例14.4%(114/789例),p=0.09,pStageIII:30.1%(168/558例)vs26.0%(82/315例),p=0.20].TTRはpStageII/IIIともに両群間で同程度であったが[pStageII:17.2(11.3)vs18.7(15.4)ヶ月,pStageIII:16.6(12.0)vs18.7(15.4)ヶ月],再発頻度に関するヒストグラムではpStageII/IIIともに非施行例の方がピークに達する時期が早期であった.再発部位を遠隔転移再発(Distant)と局所再発(Local)に分け比較したところ,Distant,Localともに再発頻度に関するヒストグラムで非施行例の方がピークに達する時期が早期であった.しかしながらDistantでは両群間でTTRが同程度であった一方[16.3(12.3)vs16.0(14.5)ヶ月],Localでは非施行例の方が短い傾向を認め[20.7(14.1)vs14.5(11.8)ヶ月)],補助化学療法の影響はDistantよりLocalで強かった.【考察・結語】pStageII/IIIともに補助化学療法はTTR延長に寄与し,特に局所再発のTTR延長効果が強い可能性が示唆された.術後サーベイランスにおいて,補助化学療法の有無によるTTRの特徴の違いに注意し経過を追う必要性が考えられた.