講演情報

[O9-5]Low Anterior Resection Syndromeのリスク因子と直腸肛門内圧との関連についての検討

林 理絵1,2, 三吉 範克1,2, 藤野 志季1,2, 関戸 悠紀1, 竹田 充伸1, 波多 豪1, 浜部 敦史1, 荻野 崇之1, 植村 守1, 土岐 祐一郎1, 江口 英利1 (1.大阪大学消化器外科学, 2.大阪国際がんセンターがん医療創生部)
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【目的】Low Anterior Resection Syndrome(LARS)は主に排便機能に関わるQOLを低下させるため,直腸がん術後の重要な合併症の一つである.当院では直腸がん症例の下部消化管内視鏡検査時に直腸肛門内圧測定を行っており,直腸がん術後LARSのリスク因子と直腸肛門内圧との関連について検討した.
 【方法】2011年6月から2023年5月までに当院でDSTまたは手縫い吻合を行った直腸がん手術症例のうち,術後のLARS scoreと術後の直腸肛門内圧のデータを有する直腸がん症例(n=100)を対象とし,MajorまたはMinor LARS発症のリスク因子と直腸肛門内圧との関連性について検討した.本研究ではLARS scoreが21-29をMinor LARS,30以上をMajor LARSと定義した.直腸肛門内圧検査にはスターメディカル社製肛門内圧測定セット(東京)を用いた.また,検査時には最大随意収縮圧(mmHg),最大静止圧(mmHg)のほか,機能的肛門管長(cm)を測定した.統計学的解析はJMP Pro 17.1.0を用いて行った.
 【結果】患者背景は年齢中央値:63歳(19-87歳),男性/女性:60例/40例,BMI中央値:22.6(16.0-33.3)であった.手術時間の中央値は341分(137-1050分),出血量の中央値は35ml(0-4910ml)であった.肛門縁から腫瘍までの距離の中央値は8cm(1-30cm),肛門縁から吻合部までの距離の中央値は6cm(1-18cm)であった.100例のうち75例に術後のMinorまたはMajor LARSの発症を認めた(75%).単変量解析の結果,年齢,手術時間,出血量,腫瘍までの距離,吻合部までの距離,リンパ節転移,術前最大静止圧が有意にLARS発症と相関を認めた(p<0.05).
 【結論】術後のMinorまたはMajor LARSと関連する因子について検討した.術後LARSの発症予測に有用である可能性が示唆された.