講演情報

[P16-1-6]当科における手術加療を行った原発性小腸癌の検討

吉川 幸宏, 鄭 充善, 辻村 直人, 野村 雅俊, 玉井 晧己, 赤丸 祐介 (大阪労災病院外科)
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【背景】原発性小腸癌は,全消化管癌のうち約0.1~1%と比較的稀な疾患で,その解剖学的位置により診断が困難であることから進行した後に発見されることが多く,予後不良である.そこで,当科で手術加療を行った小腸癌のうち空腸癌と回腸癌についてその特徴を後方視的に検討した.【対象と結果】当科にて2011年4月から2024年4月までに手術加療を行った空腸癌・回腸癌11症例を対象とした.年齢中央値は74歳(34-82歳),男性7例,女性4例であった.9例は有症状で,悪心・嘔吐6例,食思不振2例,黒色便2例,腹痛1例(重複含む)であった.2例は自覚症状を認めず,貧血精査であった.症状出現から手術までの期間は中央値1.5ヶ月(0.4-7.8ヶ月)であった.全ての症例で,内視鏡検査(小腸内視鏡検査9例,上部消化管内視鏡検査1例,下部消化管内視鏡検査1例)で確定診断が得られており,腫瘍部位は空腸7例,回腸4例であった.8例に対して根治的切除を施行した.遠隔転移を認めていた3症例で,症状緩和目的で手術を施行した.鏡視下手術5例,開腹手術6例で,手術時間は156分(80-300分),出血量は50ml(5-830ml)で,術後合併症は1例に表層SSIを認めたのみであった.腫瘍径は50mm(20-95mm)で,組織型は高分化型4例,中分化型5例,低分化型2例で,病期はII期4例,III期4例,IV期3例であった.術後補助化学療法は1例のみ施行され,再発症例は1例のみであった.IV期の症例は全て大腸癌に準じた化学療法が施行されたが,18ヶ月以上の生存を認めなかった.【結語】原発性小腸癌はその多くが有症状とともに発覚し,全て進行例であった.遠隔転移を有さなければ,必ずしも予後不良ではなく,早期発見が重要と考えられた.小腸癌は稀な疾患であり,今後症例を蓄積し検討していきたい.