講演情報
[O23-5]当院における大腸癌腹膜播種症例に対する切除術の検討
内藤 覚, 須藤 剛, 本荘 美奈子, 安田 英弘, 半沢 光, 渡部 雅崇, 榎田 会生, 佐藤 圭佑, 深瀬 正彦, 飯澤 肇 (山形県立中央病院外科)
【背景】大腸癌腹膜播種は予後不良な病態であるが,近年ではP1,2症例に対しては原発巣と同時に切除することが推奨されている.しかし,実際には完全切除は難しく有症状例に対して原発巣のみの切除にとどまることが多いのが現状である.当院における原発巣切除術を行った大腸癌腹膜播種症例の検討を行った.【対象と方法】2018年1月~2023年12月までで原発巣切除術を行った大腸癌腹膜播種症例50例について後方視的に検討した.【結果】腹膜播種症例50例の平均年齢は70.8歳)47~91歳:中央値70)で,男:女=27:23例であった.腫瘍局在は盲腸14例,上行結腸12例,横行結腸4例,下行結腸1例,S状結腸4例,直腸14例,肛門管1例で,腹膜播種の分類はP1:P2:P3=19:13:18症例であった.術前画像評価における他臓器転移は肝25例(P1:P2:P3=7:6:12),肺8例(P1:P2:P3=4:1:3),リンパ節41例(P1:P2:P3=15:11:14),脾転移がP3で1例あった.切除術はすべて開腹で行われ,郭清はD1:4例(P1:P2:P3=1:1:2),D2:8例(P1:P2:P3=3:0:5),D3:38例(P1:P2:P3=15:12:11)であり,肉眼的根治度はR0:2例(P1:P2:P3=2:0:0),R2:48例(P1:P2:P3=17:13:18)であった.腹水細胞診は48症例に施行され,陽性22例(P1:P2:P3=5:4:13),疑陽性6例(P1:P2:P3=2:2:2),陰性 20例(P1:P2:P3=12:7:1)であった.術前化学療法は3例(P1:P2:P3=1:1:1),術後補助化学療法は41例(P1:P2:P3=15:11:15)に施行され,一次治療として抗VEGF抗体薬4例(術前1例),抗EGFR抗体薬2例(術前1例),免疫チェックポイント阻害薬術後1例使用した症例も含まれた.術後観察期間は33~2135日(中央値467.5)であり,原病死はP1:11例(57%),P2:9例(69%),P3:15例(83%)であった.Kaplan-Meier生存曲線を作成し,生存率は1年でP1:76.3%,P2:61.5%,P3:52.9%で,3年ではP1:39.0%,P2:33.7%,P3:22.7%であった.【結語】当院における原発巣切除を行った大腸癌腹膜播種症例に対する検討を行った.完全切除の症例は2例のみであったが,その後も他臓器再発を認めており,予後は不良であった.P2,P3症例であっても術後補助化学療法を行うことで長期生存を得られた症例も認め,さらなる集学的治療が必要と考えられた.