講演情報
[P4-1-5]右側結腸癌における回結腸動脈の走行と長期予後の比較検討
米光 健, 笠島 裕明, 福岡 達成, 関 由季, 澁谷 雅常, 前田 清 (大阪公立大学大学院消化器外科学)
【はじめに】結腸癌手術は近年発生学に基づく膜構造に沿った間膜剥離と血管分岐に応じたリンパ節郭清の概念が提唱され,complete mesocolic excision(CME)及びcentral vascular ligation(CVL)が重要とされる.右側結腸癌においては,特に回結腸動脈(ICA)根部までの郭清が必要とされるが,ICAが上腸管膜静脈(SMV)背側を走行する症例ではSMV腹側を走行する症例と比較して郭清が不十分となっている可能性があり,予後に差があるという報告もあるが,未だ明らかではない.今回,我々はICAとSMVの位置関係とリンパ節郭清及び長期予後との関連について検討を行った.【対象と方法】2012年1月から2018年8月までに手術を施行した右側結腸癌203例のうち,ICAを主血管をとして回盲部切除を行なった105例を対象とし,後方視的に患者背景(年齢,性別,BMI),術中因子(手術時間,出血量,リンパ節郭清/転移個数),周術期成績,予後(全生存率,無再発生存率)について比較検討を行った.ICAがSMV腹側を走行する症例をA群52例,背側を走行する症例をP群53例とした.【結果】全症例の年齢中央値は72歳,男性52例,女性53例,盲腸癌49例,上行結腸癌56例,手術時間中央値は188分,出血量中央値30mlであった.病期はStage 1/2/3a/3b=53/22/25/5であった.また,術後補助化学療法は28例で施行されていた.再発は13例(肝4例,肺4例,リンパ節再発1例,腹膜播種3例,その他1例)で認められ,A群で6例,P群7例であった.患者背景,術中因子,周術期成績,予後について比較検討を施行したが,2群間に有意差を認めなかった(p=0.484).また,Stage別を含め予後についても比較検討を施行したが2群間に有意差を認めなかった(Stage1/2 p=0.51,Stage3a/3b p=0.672).【考察】右側結腸癌における回結腸動脈の走行とリンパ節郭清個数及び長期予後の関連性は認めなかった.今後更なる症例の蓄積及び腫瘍局在や進行度による追加検討が必要と考えられた.