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[PD7-3]直腸癌局所再発に対する前治療は外科治療の短期成績に影響するのか

森谷 弘乃介, 加藤 岳晴, 永田 洋士, 髙見澤 康之, 塚本 俊輔, 金光 幸秀 (国立がん研究センター中央病院大腸外科)
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<背景>
 直腸癌局所再発に対する外科切除では,高侵襲手術が必要な場合が多いが,前治療の有効性は十分なエビデンスがないのが現状である.当院では切除可能な場合はup front surgeryを基本としているが,近年では術前化学放射線療法を導入している施設からの紹介もあり,前治療による直腸癌局所再発の手術では浮腫状変化や線維化により手術が困難となる症例を経験している.
 <目的>
 切除可能な直腸癌局所再発に対する根治切除症例について,年代別に前治療の割合,短期成績に与える影響について検討する.
 <対象と方法>
 2000年1月より2023年12月までに,直腸癌局所に対して根治切除術を施行した124例を対象とした.前期(2000年-2008年):65例,中期(2009年-2018年):26例,後期(2019年-2023年):33例に群別した.群間の前治療割合,短期成績(手術時間,出血量,術後合併症,術後在院日数)について比較検討した.
 <結果>
 全症例の術式の内訳は,APR(S):24(5)例,TPE(S):19(46)例,LAR:3例,括約筋間直腸切除術:1例,ハルトマン手術:2例,側方リンパ節郭清:16例,その他:8例であった.前治療割合は,全体で24%であった.年代別に前期:23%,中期:19.3%,後期:45%であった.平均手術時間/出血量は前期:567分/1400g,中期:499分/1254g,後期:422分/783gであった.術後合併症割合(grade III以上)では,前期:9.2%,中期:19.2%,後期:33.3%で,平均術後在院日数は,前期:35日,中期:35日,後期:27日であった.またR0切除率は,前期:6.2%,中期:3.8%,後期:3.0%であった.
 <結語>
 年代別に後期では前治療の割合は倍増を認めた.前治療により術後合併症の頻度は増加したが,手術時間は短く,術後在院日数は短かった.今後は長期予後に関する検討が必須であるが,JCOG1801などの臨床試験の結果が待たれる.前治療によって外科切除に苦慮した症例や術後合併症予防の対策について供覧する.