講演情報
[O13-4]下部進行直腸癌における術前化学放射線療法の側方転移制御効果についての検討
名西 健二, 有田 智洋, 清水 浩紀, 木内 純 (京都府立医科大学消化器外科)
【背景】進行下部直腸癌(ALRC)の治療において,近年の術前治療の進歩に即した側方郭清の適応を明確にすることは重要な課題である.【目的】ALRCに対する術前化学放射線療法(NACRT)後の側方郭清における病理学的側方転移陽性[pLN(+)]率,pLN(+)の予測因子について解析し,NACRT後の側方郭清省略が許容される基準について検討する.【方法】2008年4月~2024年3月にALRCに対してNACRT後に側方郭清を伴う原発根治切除を行った67例を対象とした.同時性他癌を伴う症例は除外した.側方郭清を行った126側の側方リンパ節[LD1(8例):8側,LD2(59例):118側]を病理学的転移の有無に応じてpLN(+)群,pLN(-)群の2群に分類し,臨床病理学因子について単変量・多変量解析を行った.さらに,126側のリンパ節を治療前診断・術前診断に従ってcLN(-),cLN(+)/ycLN(-),cLN(+)/ycLN(+)の3群に分け,それぞれのpLN(+)率を明らかにするとともに,cLN診断・ycLN診断の感度,特異度について検討した.側方リンパ節転移陽性の術前診断基準は短径5mm and/or PET-CTにおけるFDG集積ありとした.【結果】pLN(+)群は7例(5.6%),pLN(-)群は119例(94.4%)だった.pLN(+)群では,術前CA19-9>37 U/mL(72.7% vs 27.3%,p=0.015),por/muc/sig(71.4% vs 22.1%,p=0.011),cLN(+)(100% vs 23.5%,p<0.001),ycN(+)(85.7% vs 39.5%,p<0.001),ycLN(+)(71.4% vs 7.6%,p<0.001)が有意に多かった.cLN(+),ycN(+),ycLN(+)を除外した2項目で多変量解析を行うと,術前CA19-9>37 U/mL(OR13.8,p=0.008),por/muc/sig(OR11.4,p=0.012)はいずれもpLN(+)の有意なリスク因子だった.pLN(+)率はcLN(-)/CRT:0%[0/91],cLN(+)/CRT/ycLN(-):9.5%[2/21],cLN(+)/CRT/ycLN(+):35.7%[5/14]で,cLN診断は感度100%,特異度76.5%,ycLN診断は感度71.4%,特異度92.4%であった.また,cLN(-)に対してLD1郭清を選択した8例の中で,郭清省略側の側方リンパ節再発を来した症例はなかった.【結語】ALRCに対する治療戦略としてcLN(-)と診断した側方リンパ節に対してNACRTを行った場合,同側の予防的側方郭清を省略出来る可能性があるが,術前CA19-9>37 U/mL,por/muc/sigの症例では慎重な判断が必要である.