講演情報

[P21-2-5]腸重積をきたした超高齢女性の腸管嚢腫様気腫症の1例

佐藤 礼実, 佐藤 雄, 北原 夏美, 森山 雄貴, 鍋倉 大樹, 門屋 健吾, 若松 高太郎, 土屋 勝, 大城 崇司 (東邦大学医療センター佐倉病院)
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症例は88歳女性.腹痛と嘔吐,その後血便を認めるようになり,近医より当院へ紹介された.腹部所見で,下腹部に拡張した腸管を疑う腫瘤を触れ,同部位に圧痛を認めていた.反跳痛はなかった.造影CTでは,上行結腸が横行結腸に陥入した腸重積を認め,その口側の盲腸は拡張していた.腸重積の先進部には明らかな腫瘤性病変はなかったものの,年齢的には悪性腫瘍の存在も考慮された.腸重積に伴う腸閉塞の診断で,同日緊急で開腹手術を施行した.術中所見は,移動盲腸で上行結腸の固定は緩く,上行結腸が横行結腸に重積して盲腸は著明な拡張を伴っていた.用手的な重積の解除は困難であったため,まず同部の結腸切除を施行した.摘出検体を確認すると,肉眼的に上行結腸から盲腸にかけて線状に多発する柔らかい粘膜下腫瘍様の隆起を認め,その一部が腸重積の先進部となっていた.また,重積に伴った潰瘍や虚血を疑う暗赤色の粘膜変化が上行結腸から横行結腸に広がっていた.悪性所見は否定的と判断し,リンパ節郭清は省略した.病理組織学的検査では,結腸の固有筋層を中心に多数の空洞が形成され一部では粘膜下層に広がり,その内腔面には異物巨細胞が集簇して周囲に線維性増生を来しており,腸管嚢胞状気腫症と診断した.術後は合併症なく経過良好であったが,超高齢かつ独居のために退院まで時間を要し,術後26日目に自宅退院した.
腸管嚢腫様気腫症は,腸管壁内に多数の含気性嚢胞を形成する比較的まれな疾患であり,原因はいまだ解明されていない.また,続発性の基礎疾患として,慢性閉塞性肺疾患やトリクロロエチレンの暴露,膠原病,炎症性腸疾患,悪性腫瘍,ステロイド長期使用や化学療法施行などが挙げられている.本症例は,CTで慢性的な気道炎症の変化を認めたが呼吸器症状はなかった.腸管嚢腫様気腫症を重積の先進部とした症例の報告は少なく,その報告では右側結腸,若年男性例が多い.今回我々は,腸重積をきたした超高齢女性の腸管嚢腫様気腫症の1例を経験したので,若干の文献的考察を交えて報告する.