講演情報

[PD7-6]直腸癌術後局所再発に対する治療戦略:手術治療と重粒子線治療

出嶋 皓, 中野 大輔, 中守 咲子, 白鳥 広志, 加藤 博樹, 夏目 壮一郎, 高雄 美里, 川合 一茂 (がん・感染症センター都立駒込病院大腸外科)
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【背景】直腸癌局所再発に対しては,根治切除が可能な場合は外科的切除が推奨されているが,手術による根治切除が困難である場合は2022年より重粒子線治療も保険適応となり,徐々に施行される症例が増えつつある.当院では保険適応に先駆け2005年から重粒子線治療を行っており,その成績を手術治療と比較した.
 【対象と方法】2005年-2018年に直腸癌術後局所再発と診断された症例.局所切除を行った手術群と重粒子治療群にわけ比較した.手術群はさらにR0手術群とR1手術群に,重粒子群は初期群(2005-2011)と後期群(2012-2018)にわけ検討した.
 【結果】手術群が59例,重粒子群が28例.性別は手術群が男性40例(67.8%),重粒子群18例(64.3%)と差がなく,治療時の年齢中央値も,各々64歳と59歳と差を認めなかった.治療後の5年局所無再発生存率(LRFS)は,手術群29.7%に対し重粒子23.9%(p=0.80),5年生存率(OS)は,46.6% vs. 39.1%(p=0.70)であり,LRFS・OSともに有意差は認めなかった.
 手術群の21例(35.6%)で仙骨や膀胱等の多臓器合併切除を要し,21例(35.6%)にClavien-Dindo分類Grade3以上の合併症を認めた.手術時間の中央値は221分(59-639),出血量は750ml(0-13100)であった.手術群の26例(44.1%)がR1切除であった.手術群の33例(55.9%)は再々発(局所or遠隔)を来していた.R0手術とR1手術でLRFSは33.5% vs. 24.3%(p=0.34)であり,OSは57.9% vs. 31.8%(p=0.12)であった.
 重粒子群の13例(46.4%)にGrade3以上の合併症を認めた(腹腔内膿瘍10例・出血8例等).スペーサー留置は前期群21例のうち9例(42.9%),後期群7例のうち6例(85.7%)に施行され,全例GORE-TEXスペーサーが用いられていた.前期群で5例(スペーサー挿入の55.6%),後期群で2例(28.6%)にスペーサー関連の合併症を認めた.
 【結語】局所再発に対する重粒子線治療は,手術治療とほぼ同等の予後が得られる.ただGORE-TEXスペーサー挿入は合併症によるQOLや予後の悪化を招くこともあり注意が必要である.