講演情報

[P3-2-6]当科における局所進行直腸癌に対する術前化学療法の成績と治療効果および再発予測因子の検討

秋山 泰樹, 新田 挙助, 山内 潤身, 永田 淳, 平田 敬治 (産業医科大学第1外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】
 本邦でも局所進行直腸癌に対する術前治療として,化学放射線治療(CRT)が広く行われるようになってきているが,有害事象や遠隔転移再発の制御の問題がある.一方,術前化学療法(NAC)については,PROSPECT試験の結果が報告されCRTに対する非劣性が示された.しかしながら,この試験はNACで有効な縮小が得られなかった症例については放射線治療の追加が担保されており,NAC単独の治療効果を示しているとは言い難い.今回,当科におけるNACの治療成績と治療効果および再発予測因子について検討を行った.
 【対象と方法】
 2017年4月から2023年1月までにNACを施行し手術を行った30例を対象とした.治療成績を示すとともに,治療効果および再発予測因子を臨床病理学的因子,NAC前の栄養状態(CONUT score,PNI),血液検査の結果(腫瘍マーカー,NLR,CRP)を用いて検討した.
 【結果】
 すべてオキサリプラチンが使用されていた.Tripiletレジメンが5例に使用されており,分子標的薬は20例に使用されていた.術前画像における治療効果判定はPRが18例,SDが7例,NEが5例であった.術後病理組織での治療効果判定はGrade3が5例,2が7例,1が17例,0が1例であったが,今回の検討では治療効果を予測する因子は得られなかった.再発は11例(36.7%)に認め,そのうち5例が骨盤内の局所再発であり,6例が遠隔転移再発であった.治療前の再発予測因子について検討を行ったところ,NAC前のCONUT scoreとCRPとの関連が示唆された(P=0.04,0.08).
 【考察】今回,当科におけるNACについて検討を行ったが,治療効果を予測する因子を見出すことはできなかった.しかしながら,CONUT scoreとCRPを用いることで再発を予測できる可能性が示唆された.本研究は症例数も少なく,単施設の後ろ向きの検討であり,レジメンの選択や治療コース,術後補助療法などが主治医判断となっていることから,今後はさらなる前向き試験が期待される.