講演情報

[R15-1]便秘・便失禁に対する骨盤底筋リハビリテーション機器開発

錦織 英知 (一般社団法人健英会えさか駅前にしごりおなかとおしりのクリニック)
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【背景】
排便障害の啓蒙活動によって診療需要が増す一方で,排便診療供給が追いついていない.その原因として排便治療に対する保険報酬が伴わないこと,医療従事者の人的不足が考えられる.加えて排便障害診療は,その対象疾患に対する患者本人の羞恥心と,機能性疾患であるため特に昨今のコロナ禍では通院の困難さを伴うといった現状がある.今回,排便障害診療を行うにあたりそれらの課題を補填する機器開発を診療現場からの医療ニーズとして提出し医工連携で機器開発を行い,この度上市した.
【目的】
便秘・便失禁に対する骨盤底筋リハビリテーション機器開発し,その運用状況について報告する.
【結果】
本開発は体内(肛門内)に挿入しない非医療機器として開発した.本製品の特徴は便失禁患者に対する肛門括約筋収縮訓練のみならず,骨盤底協調運動障害(奇異性収縮)による排出困難型便秘の患者に対し肛門弛緩を習得するため視覚的に肛門の動きをフィードバックできるように開発されている.非医療機器のため自宅での自主トレーニングを可能とし,またズボンを履いたままでの骨盤底筋リハビリテーションを可能にしたことが特徴である.
当院へ排便障害で通院中の患者に対し,新規開発機器でありその臨床的評価が不十分であることを十分に患者へ説明した上で同意を得た患者を対象に,まずは病院で本機器を用いてバイオフィードバック療法を行っている.今後は,非医療機器とはいえ適用面や安全面の観点より日常の排便診療(便秘・便失禁患者に対する)の補助器具として医師の指示のもと,自宅でのトレーニング補助機器として安全に使用できるよう患者へ指導したいと考えている.
今後の課題として,本開発機器を用いた臨床的価値の評価およびわかりやすく安全に使用できるような更なる機器の技術的工夫が必要である.
【結語】
新規骨盤底筋リハビリテーション機器の使用にあたり適切にかつ安全に運用できるよう努め,症例を蓄積した上で臨床評価を行っていきたい.