講演情報

[R9-6]当院直腸癌手術における予防的側方郭清の検討

成島 一夫, 外岡 亨, 早田 浩明, 千葉 聡, 水藤 広, 磯崎 哲朗, 天海 博之, 桑山 直樹, 加野 将之, 鍋谷 圭宏 (千葉県がんセンター食道・胃腸外科)
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【背景と目的】予防的側方郭清はJCOG0212試験でも明確な効果は証明されていない.当院下部直腸癌手術における予防的側方郭清を検討する.【対象と方法】2013年から2023年まで,術前に側方リンパ節転移を認めない(cLLN-)cStage II-III進行下部直腸癌手術111例を対象とした.患者背景は,予防的側方郭清(LLND+)55例 vs 非側方郭清(LLND-)56例を比較すると,年齢中央値 67歳(40-85)vs 70歳(35-89)(p=0.15),性別(男性/女性)41/14例 vs 34/22例(p=0.16),腫瘍径中央値 50mm(21-92)vs 45mm(23-83)(p=0.1),組織型(分化/低分化)52/3例 vs 53/3例(p=1.0),深達度(cT2/3/4)3/44/8 vs 4/47/5例(p=0.70),リンパ節転移(cN0/1/2)35/18/2例vs 35/20/1例(p=0.88),進行度(cStage II/III)35/20例vs 37/19例(p=0.84),前治療(なし/NAC/NACRT)45/6/4例vs 41/5/10例(p=0.26),術式(LAR/sLAR/ISR/APR/ハルトマン手術/骨盤内蔵全摘)5/14/9/23/1/3 vs 8/17/5/20/4/2(p=0.53).LLND+の状況と側方リンパ節転移(pLLN+)を解析し,LLND+とLLND-の短期成績と長期予後を比較・検討した.
 【結果】LLND+はcLLN-の49.5%で施行され,全例LD2以上,両側/片側 52/3例,手術アプローチは開腹/腹腔鏡/ロボット 26/22/7例.LLND+におけるpLLN+は9例(16.4%),片側/両側 7/2例,No.263/283/263+283 4/4/1例.
LLND+ vs LLND-を比較すると,短期成績は,手術時間中央値430分(196-511)vs 344分(220-631)(p<0.05)と有意にLLND+の方が長く,出血量中央値270 g(5-1840)vs 50 g(2-1350)(p<0.05)と有意にLLND+の方が多かった.合併症は,Clavien DindoIII以上で比較すると,全合併症17例(30.9%)vs 14例(25.0%)(p=0.53),術後在院期間中央値 13日(8-46)vs 10日(9-45)(p=0.17)と有意な差を認めなかった.長期予後を検討すると,無再発生存率(RFS)は5y-RFS 76.2 vs 71.8%(p=0.955),疾患特異的生存率(DSS)は5y-DSS 90.0 vs 89.9%(p=0.779)と有意な差を認めず,前治療を行ったLLND-の15例は再発を認めなかった.
 【結語】予防的側方郭清には優位な予後改善を認めず,前治療により予防的側方郭清の効果を得られる可能性が示唆された.