講演情報
[P17-1-3]切除不能な局所進行MSI-high上行結腸癌に対し免疫チェックポイント阻害薬が著効しpCRが得られた一例
鍋倉 大樹1, 佐藤 雄1, 蛭田 啓之2, 北原 夏美1, 森山 雄貴1, 門屋 健吾1, 佐藤 礼実1, 若松 高太郎1, 大城 崇司1, 土屋 勝1 (1.東邦大学医療センター佐倉病院外科, 2.東邦大学医療センター佐倉病院病理診断科)
【背景】日本では切除不能進行再発大腸癌に対して免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の使用が承認されているが,術前治療としての使用は認められていない.海外では,MSI-highやdMMRなど免疫原性の高い切除可能大腸癌に対するICIの安全性・有効性が報告されつつある.当科で経験した,臨床的に切除不能と判断したMSI-high上行結腸癌症例に対してICIが著効し,conversion surgeryを施行しpCRを得た症例について,文献考察を交えて報告する.【症例】腹部不快感を訴える70代男性【現症】身長172cm,体重69kg,BMI 23.3kg/m2,ECOG PS 1,屋内外ともに杖歩行【検査結果】血液生化学検査:貧血なし,CEA 9.4ng/mL,CA19-9 114.6U/mL.CT:十二指腸への直接浸潤を疑う上行結腸壁肥厚あり.所属リンパ節腫大あり,遠隔転移は認めず.CS:上行結腸に1/3周性の2型腫瘍あり,生検でGroup 5 Adenocarcinomaの診断.GS:十二指腸下行脚に壁外圧迫所見あり.粘膜面は異常なし.【治療経過】膵頭十二指腸合併切除も考慮されたが,PS・ADLと患者本人の希望を加味し,切除不能進行大腸癌と臨床的に診断した.FOLFOX導入後,MSI-highであることが判明したため,Pembrolizumabを3コース施行した.下痢・皮膚掻痒といった免疫関連有害事象により継続困難となったが,CTで腫瘍の著明な縮小を認めたことから,conversion surgeryとして結腸右半切除術(3群リンパ節郭清)を施行した.上行結腸と十二指腸との間に瘢痕を認めるものの,剥離可能であった.手術時間199分,出血290mL.術後は合併症なく良好に経過し,術後8日目に自宅退院となった.術後補助療法は施行せず,術後3か月の現在,無再発で外来通院中である.【最終病理】病理組織学的には腫瘍の残存を認めず,pCRであった.【結語】臨床的に切除不能なMSI-high局所進行上行結腸癌について,ICIが著効し,conversion surgeryを施行しpCRを得られた一例を報告した.