講演情報
[R2-5]大腸憩室炎の重症化リスク因子の検討
前川 展廣1, 森川 充洋1, 松中 喬之1, 嶋田 通明1, 田海 統之1, 澤井 利次1, 玉木 雅人1, 小練 研司1, 村上 真1, 廣野 靖夫2, 五井 孝憲1 (1.福井大学第一外科, 2.福井大学がん診療推進センター)
大腸憩室炎はcommon diseaseであるが,場所や炎症の程度,随伴症状などで治療は大きく変わり,時に治療方針の決定に難渋することもある.再燃する憩室炎や,重症化し手術を要する憩室炎のリスク因子の検討には,憩室炎加療後の追跡も必要となるため,詳細な報告は少なく,一定のコンセンサスは得られていない.今回我々は当院で加療した大腸憩室炎を後方視的に重症度や再燃のリスクについて検討した.
当院で2010年1月~2019年12月の10年間に入院加療を要した大腸憩室炎166例を対象とした.発症した憩室炎を重症度・治療方法・再燃について検討し,憩室炎発症部位や憩室の範囲などの関連を検索した.
全憩室炎症例の年齢の中央値は56歳(19~92歳)で,男:97名/女:69名であった.憩室炎の部位は,盲腸:5例/上行結腸:73例/横行結腸:8例/下行結腸:13例/S状結腸:66例/直腸:1例で,治療方法は,非手術症例:111例/手術症例:55例であり,手術症例のうち緊急手術は37例に施行された.保存的治療で増悪し手術へ移行した症例は2例認めた.穿孔症例は53例で,Hinchey分類でStageI:20例/StageII:16例/StageIII:10例/StageIV:7例であった.憩室炎の再燃は22例に認め,憩室範囲が局所よりも広範囲の場合に,有意に再燃を認めた(p=0.05).上行結腸憩室炎の穿孔なし,もしくはHinchey分類 StageIは73例中73例で有意に多く,S状結腸憩室炎のHinchey分類 StageII~IVは66例中30例と有意に多かった.Hinchey分類 StageII~IVの重症憩室炎は,憩室範囲が広範囲の症例で有意に多かった(p=0.00).憩室炎歴のない,もしくは1回のみの症例はHinchey分類 StageII~IVが有意に多かった(p=0.04).
重症憩室炎のリスク因子は,S状結腸で,広範囲の憩室があり,憩室炎歴が少ない症例であった.文献的考察を踏まえて報告する.
当院で2010年1月~2019年12月の10年間に入院加療を要した大腸憩室炎166例を対象とした.発症した憩室炎を重症度・治療方法・再燃について検討し,憩室炎発症部位や憩室の範囲などの関連を検索した.
全憩室炎症例の年齢の中央値は56歳(19~92歳)で,男:97名/女:69名であった.憩室炎の部位は,盲腸:5例/上行結腸:73例/横行結腸:8例/下行結腸:13例/S状結腸:66例/直腸:1例で,治療方法は,非手術症例:111例/手術症例:55例であり,手術症例のうち緊急手術は37例に施行された.保存的治療で増悪し手術へ移行した症例は2例認めた.穿孔症例は53例で,Hinchey分類でStageI:20例/StageII:16例/StageIII:10例/StageIV:7例であった.憩室炎の再燃は22例に認め,憩室範囲が局所よりも広範囲の場合に,有意に再燃を認めた(p=0.05).上行結腸憩室炎の穿孔なし,もしくはHinchey分類 StageIは73例中73例で有意に多く,S状結腸憩室炎のHinchey分類 StageII~IVは66例中30例と有意に多かった.Hinchey分類 StageII~IVの重症憩室炎は,憩室範囲が広範囲の症例で有意に多かった(p=0.00).憩室炎歴のない,もしくは1回のみの症例はHinchey分類 StageII~IVが有意に多かった(p=0.04).
重症憩室炎のリスク因子は,S状結腸で,広範囲の憩室があり,憩室炎歴が少ない症例であった.文献的考察を踏まえて報告する.