講演情報

[P14-1-6]超高齢者進行大腸癌におけるリンパ節郭清の意義

力石 健太郎1, 諏訪 勝仁1, 北川 隆洋1, 榎本 浩也1, 牛込 琢郎1, 岡本 友好1, 衛藤 謙2 (1.東京慈恵会医科大学附属第三病院外科, 2.東京慈恵会医科大学附属病院外科)
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背景
T2以深の進行大腸癌に対しては,D3郭清が推奨されている.しかしながら85歳以上の超高齢者に対しては,身体的負担を考慮して臨床的にリンパ節郭清が省略される傾向にある.
目的
超高齢者の進行大腸癌に対するリンパ節郭清の現状と予後への影響を検討する.
方法と対象
2014年1月から2020年12月までに当院で進行大腸癌に対して根治的手術を行った75歳以上の症例275例を対象とした.85歳未満(高齢者群,n=213)と85歳以上(超高齢者群,n=60)に分類して後方視的に検討した.統計学的解析としてEZRを用い,2群間の比較にはχ2検定とMann-Whitney U検定,生存曲線はKaplan-Meier法でlog-rank検定を行い,P<0.05を有意差ありと判断した.データは中央値(範囲)で示す.
結果
高齢者群と超高齢者群の比較において,観察期間は高齢者群で中央値53.0ヶ月(0-116ヶ月),超高齢者群で中央値36.5ヶ月(0-103ヶ月)(p<0.01)だった.
予後因子として性別,ASA-PS,癌占拠部位,病期,リンパ節転移の有無,手術時間,出血量,術後合併症の有無に関して検討し,性別(高齢者群男性119名(55.9%),超高齢者群男性22名(36.7%),p=0.013)で両群に差を認めた.
リンパ節郭清は高齢者群でD3郭清を164例(77.0%)に行い,超高齢者群では34例(56.7%)で行い,差を認めた(p<0.01).
経過観察期間内で高齢者群では48例,超高齢者群では15例で再発を認めたが両群で再発率は変わらず(22.5% vs 25.0%,p=0.621),また5年無再発生存期間も変わらなかった(76.4% vs 68.4%,p=0.287).
しかしながら5年全生存率は超高齢者群で低かった(高齢者群77.8% vs超高齢者群65.0%,p=0.0171).高齢者群では41名が死亡し,そのうち25例(61.0%)が癌死だったのに対し,超高齢者群では18名(30%)が死亡し,そのうち13例(55.6%)が癌死であったため,癌特異的生存率は変わらなかった(p=0.592).
考察
超高齢者に対する進行大腸癌手術では,高齢者と比較してリンパ節郭清度が低かった.5年生存率は超高齢者の方が不良であったが,癌特異的生存率は同等であり,リンパ節郭清を下げた場合でも癌に対する治療効果は同等であることが示唆された.