講演情報

[O19-6]リンパ節転移部分布からみた横行結腸癌に対する至適リンパ節郭清範囲の検討

坂本 純一, 筒井 敦子, 萩原 千恵, 若林 剛 (上尾中央総合病院外科)
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【はじめに】結腸癌に対する鏡視下手術が標準的な治療となってきている中,多くのランダム化比較試験で除外条件とされる横行結腸癌に対する鏡視下手術の課題は残されたままで,中結腸領域のD3郭清の手技に一定の見解がないのが現状である.【目的】横行結腸癌に対する至適リンパ節郭清範囲を考察し,定型化を目指したLN.#223領域の郭清手技を供覧すること.【対象】対象は2016年4月から2024年3月までの間に当科で横行結腸癌に対して手術を施行して治癒切除が得られた99例.腫瘍の主座が横行結腸の口側1/3・中央部1/3・肛門側1/3であるものをそれぞれ右側・中央部・左側横行結腸癌と定義し,リンパ節転移分布や周術期合併症などについて後ろ向きに検討した.【結果】手術時年齢中央値は75(45-92)歳で,右側35例,中央部42例,左側22例であった.BMI≧25kg/m2の肥満症例は26例(26.3%)で,鏡視下手術(腹腔鏡83例,ロボット支援下2例)における開腹移行を6例(6.1%;腫瘍浸潤による視野確保困難3例,高度癒着1例,術中出血1例,気腹後徐脈1例)に認めた.右側及び中央部横行結腸癌ではLN.#223への転移をそれぞれ5.7%,4.8%に認めた.左側横行結腸癌のうち,腫瘍の主座が横行結腸の肛門側10cmに存在する脾彎曲部癌では中結腸領域(LN.#222-221)だけでなく左結腸領域(LN.#231)へのリンパ節転移を16.7%に認めたが,LN.#253転移はなかった.Clavien-Dindo分類Grade3以上の周術期合併症は9例(9.1%)に認め,そのうち結腸-結腸吻合となった中央部および左側横行結腸癌で1例ずつ縫合不全を認めたが,膵液瘻は認めなかった.術後再発を10例(10.1%)に認めたが,リンパ節再発は認めなかった.【考察】横行結腸癌ではLN.223リンパ節転移を一定の頻度で認め,確実な系統的郭清が必要と考えられた.また左側,特に脾彎曲部近傍に存在する場合,中結腸領域の郭清に加えて下行結腸間膜の郭清を安易に縮小するべきではない.ビデオでは進行横行結腸癌に対するLN.223郭清における腹腔鏡アプローチを提示し,安全で確実な手術の定型化を目指した我々の手技のポイントを報告する.