講演情報

[P18-2-5]閉塞性大腸癌に対する大腸ステント(BTS)と経肛門イレウス管の治療成績の検討

西村 潤也, 井上 透, 坂元 寿美礼, 金城 あやか, 長谷川 健太, 多田 隆馬, 田中 裕人, 谷 直樹, 江口 真平, 長嶋 大輔, 田嶋 哲三, 井関 康仁, 西居 孝文, 長谷川 毅, 村田 哲洋, 高台 真太郎, 櫻井 克宣, 久保 尚士, 清水 貞利, 西口 幸雄 (大阪市立総合医療センター)
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【はじめに】閉塞性大腸癌に対する術前減圧目的の大腸ステント留置(Bridge to surgery:BTS)は近年急速に普及してきている.閉塞性大腸癌に対するBTSと経肛門イレウス管の治療成績の比較検討を行った.【対象と方法】当院で2015年5月から2023年10月までに根治切除目的に手術を行った,術前にステントもしくは経肛門イレウス管を挿入した閉塞性大腸癌30例を対象とした.ステント群18例(以下S群)と経肛門イレウス管群12例(以下I群)の治療成績に関してretrospectiveに検討を行った.【結果】以下S群 vs I群で記載.平均年齢:72.2歳 vs 76.5歳(p=0.25),性別:男性10例,女性8 例vs 男性 5例,女性 7例(p=0.46)で有意差なし.減圧後手術までの日数(中央値):31.5日 vs 14.0日(p=0.02)とS群で有意に長かった.S群のステント留置後から食事再開までの日数の中央値は3(0-9)日間であった.術前栄養指標に関しては,血清アルブミン値(g/dl):3.5 vs 2.9(p=0.07),Prognostic nutritional index(PNI)で栄養障害ありの割合:28% vs 58%(p=0.09,cut off値は40),Neutrophil-to-lymphocyte ratio(NLR):2.0 vs 2.9(p=0.46,cut off値は中央値),Platelet-to-lymphocyte ratio(PLR):151 vs 194(p=0.14,cut off値は中央値)であり,いずれも有意差は認めないもののS群で術前栄養状態が良好な傾向を認めた.手術成績に関しては,開腹率 11% vs 25%(p=0.32),出血量63ml vs 50ml(p=0.86),手術時間 278分 vs 275分(p=0.95)と有意差は認めなかった.最終的に永久ストーマとなった確率:6% vs 33%(p<0.05)と,S群の方が有意に低かった.また,Clavien-Dindo分類III以上の合併症発生率:17% vs 33%(p=0.29),術後在院日数:11日vs 20日(p<0.05)であり,S群で合併症発生率が低い傾向にあり,術後の在院日数は有意に短かった.最終ステージII/III/IV:8/10/0 vs 8/2/2であった.ステージIVを除く3年OS:86% vs 87%,3年RFS:58% vs 100%と有意差は認めないものの,S群でRFSが不良な傾向が見られた.【結語】閉塞性大腸癌に対するBTSは経肛門イレウス管留置と比較して周術期成績は良好であり,その有用性が示唆された.しかし中長期成績に関してはまだ不明な点も多く,さらなる症例の蓄積が望まれる.