講演情報

[R2-4]閉塞性大腸癌に対する大腸ステント治療と緊急手術の後方視的治療成績の比較

團野 克樹, 武田 和, 深田 唯史, 山本 彗, 東口 公哉, 野口 幸藏, 吉村 弥緒, 平尾 隆文, 岡 義雄, 関本 貢嗣 (箕面市立病院)
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【背景】大腸癌イレウスに対する緊急手術は術後合併症の頻度が高く,手術関連死亡率 2~17%と高率であることが報告されている.近年では消化管金属ステントの進歩により,BTS(bridge to surgery)治療も行われるようになっているが,長期予後については脈管侵襲が増大するとの報告もあり,未だ一定の結論に至っていない.当院では一貫して大腸癌イレウス症例に対しては緊急手術による切除を施行してきが,2017年からはステント留置を導入した.今回我々は,当院での大腸癌イレウス手術症例を検討し,その治療方針の有用性を比較検討した.
 【対象】2011年4月から2017年9月までに当院で大腸癌イレウスに対して緊急開腹手術を施行した113例(緊急手術群)と2017年3月から2023年3月に,当院で初発の閉塞性大腸癌に対しステント留置術を施行した68例(ステント群)をを対象とし後方視的に検討を行った.
 【結果】年齢74歳(35-100歳),男女比は97例:84例であった.腫瘍局在は右側34例,左側147例でS状結腸が最も多く54例であった.また進行度分類はStage I/II/III/IV=1例/59例/54例/67例とStage IV症例が多く,ステント群の内22例,緊急手術群のうち1例は非切除となった.またステント群の手術は開腹9例/腹腔鏡37例で,ステント挿入から手術までの日数の中央値は20日であった.ステント留置における合併症は穿孔を2例(4.3%)に認めた.ステント群では一時的/永久人工肛門が2例/3例で,緊急手術群では一時的/永久人工肛門が0/10例であった.原発切除可能であった158例中Stage IVを除く104例(Stage I/II/III=1例/59例/54例)を解析したところ,Stage IIの3年無再発生存率は緊急手術群:ステント群=93.84%:94.12%(P=0.808),Stage IIIの3年無再発生存率は緊急手術群:ステント群=67.08%:55.59%(P=0.624)と差を認めなかった.【結語】長期予後における検討は十分では無いが,ステント留置により待機的な手術が可能となり,人工肛門造設回避につながると考えられた.