講演情報

[P7-1-4]重症/難治性潰瘍性大腸炎手術症例における術前CT画像での周術期成績の予測因子の検討

長谷川 誠, 関戸 悠紀, 荻野 崇之, 竹田 充伸, 波多 豪, 浜部 敦史, 三吉 範克, 植村 守, 土岐 祐一郎, 江口 英利 (大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学)
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【はじめに】重症/難治性潰瘍性大腸炎(UC)は手術のタイミングの判断が難しく手術までに様々な治療介入が加えられ術前検査に影響することが少なくない.今回我々は,治療介入の影響を早期に受けにくくサルコペニアや肥満の指標となる大腰筋量や内臓脂肪を術前CTで評価し重症/難治UC手術症例での周術期成績への影響を検討した.
 【方法】当院で2010年~2023年の期間に施行したUC初回手術103例のうち,重症/難治で術前半年以内にCTが撮影された53例を対象とした.評価項目は第3腰椎レベルのPsoas Muscle Index(PMI,cut off値:男性3.74 cm2/m2,女性2.29 cm2/m2),および内臓脂肪面積/皮下脂肪面積比(VSR)としPMIはcut off値以下をサルコペニアと定義しサルコペニアあり(S),サルコペニアなし(NS)に分け,VSRは測定値と周術期成績との関連を後方視的に比較検討した.
 【結果】対象は53例で,S/NS 14/39で,VSRは0.71±0.56であった.対象となる患者背景は,男/女 30/23,手術時年齢(歳)47.4±19.5,罹病期間(年)6.2±7.3,BMI 19.3±3.96,手術適応は重症/難治25/28でS/NSの両群に有意差を認めないが,VSRは男性で有意に高い傾向(p=0.007)で,手術時年齢と有意な正の相関を認めた.
術前治療は生物学的製剤30例,免疫調整剤30例,ステロイド45例で使用されS/NSの両群に有意差を認めないが,VSRはステロイド使用症例で有意に低い傾向(p=0.011)にあった.また,術前Alb(g/dL)2.6±0.84,PNI 32.7±9.1でS/NSの両群に有意な差を認めず,VSRも有意な相関を認めなかった.手術所見は全例腹腔鏡で施行され,術式はIAA 5例,IACA 23例,亜全摘 23例,その他 2例で,手術時間(min)284.5±96.9,出血量(ml)253.6±576.3でS/NSの両群に有意差を認めなかったが,VSRは出血量と有意な正の相関(p<0.001)を認めた.また,術後在院日数(日)27.1±28.9ではS/NSの両群で有意差を認めずVSRと有意な相関を認めなかった.
術後合併症は15例で認められ,S群に麻痺性イレウスが有意に多い傾向(p=0.016)にありVSRはSSI症例で有意に高い傾向(p=0.016)を認めた.
 【まとめ】
当院での重症/難治性UC手術症例ではサルコペニアは術後麻痺性イレウスの,VSRはSSIの予測因子となる可能性が示唆された.