講演情報

[P16-1-3]S状結腸憩室炎保存的加療後,5年を経て腸閉塞をきたしS状結腸小腸瘻が判明した症例

吉留 しずか, 松尾 洋一郎, 西田 祐一朗, 冨田 実代, 吉満 工平, 石神 純也 (鹿児島県立大島病院)
PDFダウンロードPDFダウンロード
左側結腸憩室炎は膀胱など周囲臓器との瘻孔や膿瘍形成といった合併症が多いが,小腸との瘻孔を形成した報告は多くない.今回われわれは腸閉塞を契機にS状結腸憩室炎に由来する結腸小腸瘻が判明した1例を報告する.症例は53歳男性,5年前にS状結腸憩室炎の保存的加療歴がある.受診の10日ほど前から便秘傾向であり,腹部膨満と腹痛を主訴に前医を受診した.造影CTでS状結腸に閉塞機転と口側結腸および一部小腸の拡張があり,当科紹介となった.大腸内視鏡では多発するS状結腸憩室と同部位の粘膜浮腫と狭窄が疑われ,明らかな腫瘍性病変はなかった.ガストロ造影ではS状結腸憩室部分の通過障害があったためにまずは入院2日目に経肛門イレウスチューブを留置した.腹部膨満軽減なく入院3日目経鼻イレウスチューブも留置したが,腸閉塞症状の改善なく,入院9日目に腹腔鏡下回腸ストマ造設を行うこととした.腹腔鏡で腹腔内を観察したところ,S状結腸と小腸の広範囲な癒着があり,癒着剥離を試みるも困難であったため開腹術に移行した.小腸が複数のループを形成しながらS状結腸に癒着しており,小腸とS状結腸の間を剥離すると経肛門イレウスチューブが露出し,S状結腸小腸瘻が判明した.S状結腸瘻孔部分は縫合閉鎖,小腸側瘻孔部は瘻孔を含めるように小腸を部分切除し,切除吻合部分から20cm程度口側でストマ造設した.切除した小腸には瘻孔と憩室を認めた.術後3日目から食事再開し,術後14日目にはストマ手技獲得し自宅退院した.その後CTと大腸内視鏡施行し生検で悪性所見ないことを確認後,7か月後に小腸ストマ閉鎖とS状結腸切除を施行し,術後一過性に麻痺性イレウスを起こしたものの保存的に改善し,術後14日目に自宅退院となった.狭窄合併憩室炎は他臓器との瘻孔と同時に存在することが多く,自然治癒は困難である.初回手術では切除吻合困難であったS状結腸憩室炎によるS状結腸小腸瘻に対して,炎症改善後の待機手術をすることによってS状結腸の切除吻合を行うことができたため,若干の文献的考察を加えて報告する.