講演情報
[O21-5]当院における直腸癌側方リンパ節郭清症例の術後静脈血栓症の検討
草深 弘志, 植村 守, 瀧口 暢生, 小林 雄太, 朴 正勝, 竹田 充伸, 関戸 悠紀, 波多 豪, 浜部 敦史, 荻野 崇之, 三吉 範克, 土岐 祐一郎, 江口 英利 (大阪大学消化器外科学)
【はじめに】術後静脈塞栓症(Venous thromboembolism;VTE)は周術期における致死性合併症の一つである.本邦のVTEに関するガイドラインにおいて,VTEのリスクとして50歳以上,心筋梗塞の既往,糖尿病,肥満,悪性疾患が挙げられている.悪性腫瘍手術におけるVTE発症リスクは高リスク群に分類されるが,腫瘍の部位や術式によりそのリスクは異なり,結腸直腸癌術後のVTEの発生率としては1.4-2.4%という報告がある.進行下部直腸癌に対しては側方リンパ節郭清(Lateral lymph node dissection;LLND)が推奨されているが,一方でLLNDを行う場合,より多量の出血や手術時間の延長,腸骨静脈系への直接的な物理刺激が加わるなどの問題がある.しかしLLNDとVTE発症の関連性については十分に検討されているとは言えない.本研究ではLLNDと術後VTE発症との関係を明らかにすることとした.
【対象と方法】2010年4月から2018年3月の間に,当院で施行した直腸癌切除症例(n=545)を対象とし,LLND実施症例と非実施症例の2群に分け,臨床病理学的背景およびVTE発症率を比較検討した.
【結果】全545例の内,LLNDを実施した症例は113例(20.7%)であった.LLND群(n=113)および非LLND群(n=432)における患者背景の比較では,性別およびBMIには差はなく,年齢(中央値;62歳 vs 64歳,p=0.005)やASA-PSが3以上の割合(1.77% vs 7.40%,p=0.48)に統計学的有意差を認めた.手術因子において,LLND群で開腹手術症例の割合が高く(17.7% vs 4.6%,p<.001),出血量(中央値;340ml vs 30ml,p<.001)および手術時間(中央値;625分 vs 302分,p<.001)においても統計学的有意差を認めた.術後薬物的VTE予防を実施した症例(60.2% vs 34.5%,p<.001)はLLND群で高かったものの,術後症候性VTE発症例はLLND群で5例(4.42%),非LLND群で3例(0.69%)であり,統計学的有意差をもってLLND群で発症率が高かった(p=0.012).
【結論】直腸癌切除症例において,LLNDは術後VTE発症の高リスク因子である可能性が示唆された.LLND群と非LLND群では臨床背景が大きく異なっており,今後さらなる症例数の蓄積を行い,詳細な解析を行う必要がある.
【対象と方法】2010年4月から2018年3月の間に,当院で施行した直腸癌切除症例(n=545)を対象とし,LLND実施症例と非実施症例の2群に分け,臨床病理学的背景およびVTE発症率を比較検討した.
【結果】全545例の内,LLNDを実施した症例は113例(20.7%)であった.LLND群(n=113)および非LLND群(n=432)における患者背景の比較では,性別およびBMIには差はなく,年齢(中央値;62歳 vs 64歳,p=0.005)やASA-PSが3以上の割合(1.77% vs 7.40%,p=0.48)に統計学的有意差を認めた.手術因子において,LLND群で開腹手術症例の割合が高く(17.7% vs 4.6%,p<.001),出血量(中央値;340ml vs 30ml,p<.001)および手術時間(中央値;625分 vs 302分,p<.001)においても統計学的有意差を認めた.術後薬物的VTE予防を実施した症例(60.2% vs 34.5%,p<.001)はLLND群で高かったものの,術後症候性VTE発症例はLLND群で5例(4.42%),非LLND群で3例(0.69%)であり,統計学的有意差をもってLLND群で発症率が高かった(p=0.012).
【結論】直腸癌切除症例において,LLNDは術後VTE発症の高リスク因子である可能性が示唆された.LLND群と非LLND群では臨床背景が大きく異なっており,今後さらなる症例数の蓄積を行い,詳細な解析を行う必要がある.