講演情報

[VSY1-2]横行結腸癌に対する腹腔鏡下D3リンパ節郭清術の定型化―a Combined Lateral-to-Medial and Medial-to-Lateral Approach

松村 直樹1, 佐藤 馨2, 金原 圭吾2, 笹川 佳樹2, 榊間 貴滉2, 齋藤 匠2, 羽根田 祥3, 野村 良平2, 高橋 賢一3, 成島 陽一2, 徳村 弘実2 (1.東北労災病院内視鏡外科, 2.東北労災病院消化器外科, 3.東北労災病院大腸肛門外科)
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【はじめに】横行結腸間膜を取り巻く解剖は複雑で他の大腸癌のように単純な内側,外側アプローチではpitfallが多く腹腔鏡下手術では特に定型化が難しい.我々は内側アプローチの膵損傷や郭清上縁の認識の困難性,外側アプローチでの副中結腸静脈(ARCV)損傷の予防を考慮しアプローチ法を工夫した.左側はlatera-to-medial(LM),右側は郭清を伴うmedial-to-lateral(ML)approachで行うa Combined Approachを定型化し,その有用性を報告する.【手術手技】左側外側アプローチ:左側のみ網嚢を解放する.膵下縁で網嚢後壁と横行結腸間膜前葉と間膜内脂肪織を切離し横行結腸間膜後葉のみにし菲薄化しガーゼを置く.2)左側内側アプローチ:頭側に展開すると横行結腸間膜後葉越しにガーゼが透見でき,横行結腸間膜後葉を切離し,windowを作成する.これにより横行結腸間膜の左側を安全確実に膵から切離できる.3)右側内側アプローチ:(右半結腸切除では回盲部から頭側へ進め)間膜を十二指腸と膵前面から剥離授動する.上腸間膜静脈(SMV)末梢で郭清を開始し尾側から胃結腸静脈管(GCT)とARCVの分岐に達する.ARCVは横行結腸間膜後葉から透見され,切離する.そののち間膜前葉まで切離し胃結腸間膜に到達することで広く膵頭部を露出させ,左側のwindowから見える膵下縁との連続性が得られる.これによりリンパ節郭清の上縁を認識し中結腸領域の郭清は,右側はGCT,左側は膵下縁とし膵損傷なく行える.特にSMVの完全露出は静脈,動脈ともに安全に剥離切離できる重要なポイントであり,膵下縁からの切離も同様である.この一連の操作のほとんどは超音波凝固切開装置で行っており,ビデオで強調したい.膵前面にガーゼを置く.4)右側外側アプローチ:ガーゼを指標に右側の胃結腸間膜と間膜前葉のlayerを切離する.すでに脈管は全て切離できているので,単純に膵から安全に間膜の切離が完了する.【結果】このStrategyを定型化した2012年以降,151例の横行結腸癌に対して腹腔鏡手術を施行した.手術時間は239分(中央値),出血量27ml(中央値),開腹移行0例,縫合不全を含むClavien-Dindo分類IIIb以上の重篤な合併症はない.