講演情報

[P3-1-1]結腸癌におけるParvimonas Micraの発現とその臨床的意義

宮坂 俊光, 山田 岳史, 上原 圭, 進士 誠一, 松田 明久, 横山 康行, 高橋 吾郎, 岩井 拓磨, 香中 伸太郎, 林 光希, 松井 隆典, 吉田 寛 (日本医科大学付属病院消化器外科)
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【背景と目的】近年,大腸癌と口腔細菌叢の関連性が注目されている.歯周病に関連する口腔内常在菌であるFusobacteria nucleatumF. nucleatum)やParvimonas micraP. micra)は大腸癌との関連性が報告されいる.F. nucleatumは右側結腸癌に多く発現することが知られているが,P. micraについては明らかでない点が多い.本研究では,結腸癌組織におけるP. micraの発現を解析し,腫瘍部位や臨床病理学的因子との関係を明らかにすることを目的とした.
 【対象と方法】2017年1月から2020年12月の期間に当院で施行された結腸直腸癌の腫瘍組織からDNAを抽出し,Digital PCR法でP. micraおよびF. nucleatumのコピー数を解析した.
 【結果】対象は154例.男性は82例(53.2%)で,年齢の中央値は72歳(42-94)であった.腫瘍部位は右側結腸:左側結腸=73:81,pStage I:II:III:IV=22:53:43:36であった.P. micra,F. nucleatumはそれぞれ74例(48.1%),94例(61.0%)で検出された.コピー数で比較すると,P. micraは左側結腸癌に(p=0.02),F. nucleatumは右側結腸癌に多く発現していた(p=0.02).また,P. micra,F. nucleatumともに,深達度T1では発現数が少なかった(p=0.04,p=0.01).それぞれの菌の発現数を,高値群,低値群および無発現群の2群に分けて臨床病理学的因子と比較すると,P.micraF. nucleatumともに高値群では腫瘍径がより長かった(p=0.002,p=0.008).また,P. micra高値群は深達度T4に多い傾向である一方(p=0.055),F. nucleatum高値群は深達度T3以深に有意に多かった(p=0.042).
 【結語】F. nucleatumは右側結腸癌,P. micraは左側結腸癌に多く発現していた.その一方で,両菌種ともより進行した大腸癌に多く発現しており興味深い結果である.