講演情報

[O14-1]当院における経会陰的直腸脱手術の適応と限界

青松 直撥, 櫛谷 友佳子, 青松 敬補 (青松記念病院外科)
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【背景】直腸脱根治手術は,経腹手術と経会陰手術に大別される.経会陰手術は経腹手術に比べ,合併症の発生が少なく,痛みが少ないこと,癒着や瘢痕を残さないことなどが利点である.当院では,高齢者施設からの紹介も多くあり経会陰的手術を選択することが多い.経会陰手術としてはGant-三輪-Thiersch法,Delorme法,Altemeier法が代表的である.肛門疾患・直腸脱診療ガイドライン2020年版によると,脱出腸管が5 cm未満の場合はGant-三輪-Thiersch法またはDelorme法を選択し,5 cm以上の場合はAltemeier法を選択することが推奨されている.
【目的】当院の直腸脱手術の現状を把握し,術式の妥当性について検討する.
【対象】2016年1月から2024年3月までに経会陰的直腸脱根治術46例.
【結果】Gant-三輪法16例(年齢中央値82歳,男:女;1:15,脱出腸管中央経4.0cm),Delorme法20例(年齢中央値81歳,男:女;3:17,脱出腸管中央径4.0cm),Altemeier法10例(年齢中央値83歳,男:女;0:10,脱出腸管中央径6.2cm)に施行されていた.手術時間中央値は,Gant-三輪法30分,Altemeier 65分,Delorme法68分であった.再発は,脱出腸管が長い直腸脱および脱出長3cmにGant-三輪法を選択した2例および,肛門のtonusが弱い直腸脱にDelorme法を選択した1例と脱出腸管が長い症例にDelorme法を選択した1例およびDelorme切除粘膜開始部分が歯状線からの距離が長かった1例および脱出長6cmの再発症例にAltemeier法を選択した1例に見られた.再発症例を経験してから,脱出腸管が長い症例にはAltemeier法を選択するとともに,肛門のtonusが弱い症例には,Delorme法においてもThiersch法を追加し,手術開始前に直腸脱起始部を同定できるように肛門を確実に展開することとした.再発症例にAltemeier法を施行したが,それでも再発する症例には経肛門アプローチは限界と判断し腹腔鏡下直腸固定術を行いその後の再発は認めていない.
【結語】当院の直腸脱に対する手術は安全に行われていた.手術時に脱出腸管の長さ等で最終的な術式を選択している.当院の手術の実際について供覧する.