講演情報
[O21-7]腹腔鏡下結腸癌手術後の腹壁瘢痕ヘルニア
鳥居 翔1, 倉地 清隆2, 岩瀬 友哉2, 高木 徹2, 杉山 洸裕2, 小嶋 忠浩2, 赤井 俊也2, 美甘 麻裕2, 竹内 裕也2 (1.浜松医科大学外科学第一講座, 2.浜松医科大学外科学第二講座)
【はじめに】腹壁瘢痕ヘルニアには肥満,糖尿病,免疫抑制薬,喫煙,COPD,腹部大動脈瘤,開腹法,創感染などのリスク因子があるが,大腸癌術後は創感染の頻度が高く,他の腹部手術と比較してヘルニア発症率が高いと考えられる.今回,当科での腹腔鏡下結腸癌手術後のリスク因子を明らかにすることを目的とする.【対象と方法】2017年3月~2020年12月の腹腔鏡下結腸癌手術163例の内,観察期間3年以上の119例を後方視的に検討する.【結果】年齢中央値71歳.男女比71:48.BMI中央値22.7.既往歴・生活歴は腹部手術歴39例(32.8%),腎疾患30例(25.2%),呼吸器疾患26例(21.8%),喫煙21例(17.6%),糖尿病18例(15.1%),心疾患例17例(14.3%),免疫抑制薬使用4例(3.4%),胸腹部大動脈瘤3例(2.5%).術式は右側結腸切除60例(50.4%),横行結腸部分切除7例(5.9%),左側結腸切除5例(4.2%),S状結腸切除46例(38.7%),低位前方切除1例(0.8%).手術時間中央値198分,術中出血量中央値20ml,開腹移行2例(1.7%).短期合併症(Clavien-Dindo分類≧grade II)は24例(20.2%)で内訳はSSI 9例(7.6%),出血7例(5.9%),イレウス6例(5.0%),肺炎1例(0.8%),その他7例(5.9%).観察期間中央値58カ月で術後化学療法は30例(25.2%)に施行した.腹壁瘢痕ヘルニア33例(27.7%)の内訳は症候性10例(30.3%),無症候性23例(69.7%)で,4例(12.1%)が手術を施行した.発症時期は中央値38ヵ月であった.単変量解析で女性,腹部手術歴ありの群で有意に腹壁瘢痕ヘルニアが多く,肥満,糖尿病ありの群で多い傾向を認めた.【考察】腹腔鏡下結腸癌手術後の腹壁瘢痕ヘルニア発症率は他の腹腔鏡手術と比較し高率であったが,症状を認めたものは多くなかった.本検討では,女性は皮下脂肪のため,腹部手術歴は瘢痕により閉創のリスクが存在することが示唆された.