講演情報
[WS2-8]瘻孔・膿瘍形成クローン病に対する腹腔鏡手術の成績
新原 健介, 上神 慎之介, 渡谷 祐介, 中島 一記, 吉村 幸祐, 土井 寛文, 亀田 靖子, 大毛 宏喜, 髙橋 信也 (広島大学大学院医系科学研究科外科学)
【目的】クローン病(以下CD)に対する腹腔鏡手術において,膿瘍・瘻孔形成例は課題の1つである.治療上の問題点と対策を明らかにする.
【対象・方法】2009年1月から2023年12月までにCDに対して腹腔鏡下に腸管切除術を施行した96例を対象とし,狭窄のみのA群と膿瘍・瘻孔などを合併したB群に分け,後方視的に患者背景,周術期因子,術後成績について比較検討した.膿瘍・瘻孔合併例への具体的な対策としては,①瘻孔・膿瘍合併例は感染の制御を含め炎症の沈静化を行う,②術前画像で内瘻の評価を行い修復術式のシミュレーションを行っておく,③腹部創瘢痕と授動,切除範囲に基づいてカメラポートを決定し,鉗子ポート追加の可否によって手術継続の判断を行う.
【結果】A群72例,B群24例,年齢中央値はA群41歳,B群28歳で有意にB群が若年であった(p<0.01).男女比(A群53:19,B群17:7),罹病期間(A群81ヶ月,B群42.5ヶ月),術前治療薬使用率(ステロイド/5-ASA/免疫調節薬/生物製剤)に有意差は認めなかった.周術期因子に関しては手術回数(初回/複数回 A群:B群=59/13:21:3),手術時間(A群:B群=212.5分:224分)に有意差は認めなかったが,出血量は中央値でA群64ml(17.2-274),B群144ml(31-624.5)と,有意にB群に多い結果(p=0.032)となった.開腹移行症例では有意に罹病期間が長く(250ヶ月:69ヶ月(p=0.03)),手術回数が多い症例であった.術後合併症数(A群:B群=14:1),術後入院日数中央値(A群:B群=11:11.5)に関して両群に有意差は認めず,Clavien-Dindo GradeIII以上の合併症はB群で0例と良好な成績であった.術後観察期間中央値は21ヶ月(7-173)でA群,B群いずれの症例も再発は認めていない.
【結語】膿瘍・瘻孔合併例では出血量が多い傾向はあったが安全に腹腔鏡手術可能であり,対策や方針は妥当と考える.ただし複数回手術既往のある症例では手術時間の延長や出血量増多に繋がる可能性があるため,腹腔鏡手術中止の判断が遅れない事が重要である.
【対象・方法】2009年1月から2023年12月までにCDに対して腹腔鏡下に腸管切除術を施行した96例を対象とし,狭窄のみのA群と膿瘍・瘻孔などを合併したB群に分け,後方視的に患者背景,周術期因子,術後成績について比較検討した.膿瘍・瘻孔合併例への具体的な対策としては,①瘻孔・膿瘍合併例は感染の制御を含め炎症の沈静化を行う,②術前画像で内瘻の評価を行い修復術式のシミュレーションを行っておく,③腹部創瘢痕と授動,切除範囲に基づいてカメラポートを決定し,鉗子ポート追加の可否によって手術継続の判断を行う.
【結果】A群72例,B群24例,年齢中央値はA群41歳,B群28歳で有意にB群が若年であった(p<0.01).男女比(A群53:19,B群17:7),罹病期間(A群81ヶ月,B群42.5ヶ月),術前治療薬使用率(ステロイド/5-ASA/免疫調節薬/生物製剤)に有意差は認めなかった.周術期因子に関しては手術回数(初回/複数回 A群:B群=59/13:21:3),手術時間(A群:B群=212.5分:224分)に有意差は認めなかったが,出血量は中央値でA群64ml(17.2-274),B群144ml(31-624.5)と,有意にB群に多い結果(p=0.032)となった.開腹移行症例では有意に罹病期間が長く(250ヶ月:69ヶ月(p=0.03)),手術回数が多い症例であった.術後合併症数(A群:B群=14:1),術後入院日数中央値(A群:B群=11:11.5)に関して両群に有意差は認めず,Clavien-Dindo GradeIII以上の合併症はB群で0例と良好な成績であった.術後観察期間中央値は21ヶ月(7-173)でA群,B群いずれの症例も再発は認めていない.
【結語】膿瘍・瘻孔合併例では出血量が多い傾向はあったが安全に腹腔鏡手術可能であり,対策や方針は妥当と考える.ただし複数回手術既往のある症例では手術時間の延長や出血量増多に繋がる可能性があるため,腹腔鏡手術中止の判断が遅れない事が重要である.