講演情報
[R7-4]超高齢者(90歳以上)の進行大腸癌患者に対する腹腔鏡下手術の治療成績
大島 隆一1, 四万村 司1, 臼井 創大2, 天野 優希2, 勝又 健太2, 根岸 宏行2, 内藤 正規2, 朝倉 武士1, 大坪 毅人3 (1.川崎市立多摩病院消化器・一般外科, 2.聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院消化器・一般外科, 3.聖マリアンナ医科大学病院消化器・一般外科)
【背景】超高齢化社会を迎え90歳を超える高齢者大腸癌症例に遭遇することも珍しくない.しかし,高齢者は基礎疾患を有することが多く腹腔鏡手術の安全性,有用性に関しては議論の余地がある.【目的】90歳以上の超高齢者の進行大腸癌患者に対する腹腔鏡手術の検討を行いその安全性,妥当性を検討する.【対象および方法】2013年から2023年までの間に当法人(2病院)で90歳以上の超高齢者のcT2以上の進行大腸癌患者に対して腹腔鏡手術を施行しR0切除となった29例を対象とし,術後の短期および長期成績を後方視的に検討した.【結果】年齢の中央値は90歳(90-101歳),男性13例,女性16例.26例(89.7%)が何らかの基礎疾患を有しており,呼吸機能検査では17例(58.6%)に異常を認めた.腫瘍の占拠部位は結腸が19例,直腸が10例.手術時間の中央値は210分(120-537分),出血量は20ml(0-174ml).低位前方切除や直腸切断術などの高侵襲手術は6例(20.7%)に施行されていた.21例(72.4%)の症例がpT3以上の進行癌であったが,D3リンパ節郭清が施行されたのは12例(41.4%)にとどまっていた.術後合併症を認めた症例は3例(10.3%)であり,Clavien分類III以上の重篤な合併症はなかったが,術後在院日数は15日(9-44日)とやや長い傾向にあった.再発は4例に認め3例が肝転移,1例が腹膜転移であった.原癌死は4例のみであったが,他病死が6例(20.7%)であった.【考察】ほとんどの症例が何らかの基礎疾患を有しており,呼吸機能も半数以上に障害を認めていたが,術後に重篤な合併症はなく超高齢者に対しても安全に腹腔鏡手術が行われていた.ただし,術後の入院期間はやや長く回復には時間を要していた.長期成績に関しては,原癌死は4例のみであったがpStageに関係なく他病死を20.7%と高率に認めた.以上より,郭清をやや手控えることで術後の合併症の軽減が図られている可能性が示唆されたが,他病死の割合が多い超高齢者にとっては長期的にも許容できると考えられた.