講演情報
[O6-5]当院の結腸体腔内吻合症例における周術期治療成績の検討
井上 卓哉, 浜部 敦史, 竹田 充伸, 関戸 悠紀, 波多 豪, 荻野 崇之, 三吉 範克, 植村 守, 土岐 祐一郎, 江口 英利 (大阪大学消化器外科)
【背景】剥離授動範囲の縮小や術後腸管蠕動の早期回復などのメリットを期待して施行される体腔内吻合のなかにも,複数の吻合法が存在するが,それぞれの周術期治療成績の違いについては明らかでない.当院で結腸癌に対して体腔内吻合を施行した症例において,周術期治療成績を検討した.【対象と方法】当院において2022年8月から2024年3月までの間に施行した,結腸癌に対する体腔内吻合を伴うminimally invasive surgery54例を対象とし,背景因子,臨床病理学的特徴および周術期治療成績について,後ろ向きに検討を行なった.【手術手技】54例のうち17例はDelta吻合,37例はOverlap法にて吻合を施行しており,観察期間の後半は全例Overlap法で吻合を施行していた.Overlap法の37例のうち8例は吸収性有棘縫合糸による連続縫合で挿入孔を閉鎖しており,29例ではステープラーによる閉鎖(sutureless Overlap)を施行していた.現在はこのsutureless Overlapを基本としている.また,54例中37例はロボット支援手術であり,吻合前には原則全例ICG蛍光法による腸管血流の評価を行なっている.【結果】結腸体腔内吻合を施行した54例の背景因子について,年齢は74歳(46歳-92歳),性別は男性24例女性30例,BMIは22.8(16.6-37.1),病変の局在(C/A/T/D)は18例/22例/12例/2例,Stage(0/I/II/III/IV)は2例/20例/12例/14例/6例であった.手術時間は256.5分(132分-410分),吻合時間は15分(7分-43分),出血量は5mL(0mL-380mL)であった.Overlap法の吻合時間については,sutureless Overlapで有意に短くなっており(p<0.0001),sutureless OverlapとDelta吻合では有意差を認めなかった.また,腹腔鏡とロボット手術の比較でも吻合時間に有意差を認めなかった.術後評価項目として初回排ガスまでの日数は2日(1日-5日),初回排便までの日数は2.5日(1日-5日),術後在院日数は10日(6日-42日),術後合併症はイレウスが1例,腹腔内膿瘍が1例であり,吻合法による有意差を認めなかった.【結語】いずれもの吻合法も周術期治療成績は概ね同等であった.sutureless Overlapは吻合時間の短縮に有用である可能性がある.