講演情報

[P7-1-5]潰瘍性大腸炎癌化症例の発症因子と予後に関する検討

井上 英美1, 園田 光2, 新谷 裕美子1, 操 佑樹1, 中林 留美1, 工代 哲也1, 大城 泰平1, 西尾 梨沙1, 古川 聡美1, 岡本 欣也1, 山名 哲郎1 (1.JCHO東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター, 2.JCHO東京山手メディカルセンター炎症性腸疾患センター)
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はじめに)潰瘍性大腸炎(UC)の長期罹患例では炎症を背景とした癌化がみられることが知られているが,その発症因子や予後については明らかではない.今回,UC癌化症例の発症因子や予後を明らかにするためにUCの手術症例を検討した.
対象と方法)2010年1月から2020年1月の間に当院でUCの手術をうけた190人を対象に,UC悪化により手術を施行された153症例(UC群)と,異形成及び大腸癌で手術を施行された37症例(UC-CC群)に分け,発症因子および予後について後方視的に検討した.
結果)性別はUC群では男性78人,女性75人,UC-CC群では男性29人,女性8人で,UC-CC群では男性が有意に多かった(P=0.003).手術時の平均年齢はUC群では47.3歳,UC-CC群では52.1歳で両群間に差はなかった.罹患期間はUC群では79ヶ月,UC-CC群では192ヶ月であり,UC-CC群 が有意に長かった(p<0.001).手術理由はUC群では内科治療抵抗性126例,中毒性巨大結腸症および穿孔24例,UC-CC群では異形成および大腸癌33例,狭窄1例,内科治療抵抗性3例であった.Surveillance colonoscopyはUC-CC群37例中31例(83.8%)に施行されており,4例では内視鏡的粘膜切除が先行されていた.Surveillance colonoscopyで診断された31症例では異形成が10例,Tisが12例と癌化の早期段階での手術症例が多かったが,Surveillance colonoscopyが行われていなかった6例ではT3が2例,T4が2例と進行癌が多く,T4症例は非根治切除による原病死と肺転移の転帰であった.
結語)UC癌化症例は罹病期間の長い男性に多い傾向がみられ,Surveillance colonoscopyが行われないと手術が行われても予後不良であった.罹患歴の長い男性症例ではSurveillance colonoscopyを徹底することの重要性が示唆された.