講演情報

[VPD3-7]大腸穿孔に対する腹腔鏡手術の検討

吉川 雄祐1, 諏訪 宏和1, 藤原 遼1, 西山 匠1, 高島 琢朗1, 布施 雄馬1, 杉村 直彦1, 北本 真悠1, 高田 由佳理1, 丸田 祥平1, 鈴木 千穂1, 太田 絵美1, 諏訪 雄亮3, 大田 洋平1, 小澤 真由美2, 小野 秀高1, 吉田 謙一1, 野尻 和典1, 舛井 秀宜1, 長堀 薫1 (1.横須賀共済病院外科, 2.横浜市立大学附属病院消化器外科, 3.横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター外科)
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【背景】
大腸穿孔に対する腹腔鏡手術の安全性は確立されていない.憩室穿孔症例に関しては腹腔鏡下洗浄群と腸切除群で比較し死亡率に差がなく,コスト面からも腹腔鏡下洗浄が推奨された報告がある.一方で手術を必要としていない患者にも腹腔鏡下洗浄が施行されているという報告がある.また,糞便性の腹膜炎となっている患者や持続的な穿孔がある患者では腹腔鏡下洗浄のみでは不十分であり,対象症例を的確に選ぶ必要がある.
【対象/方法】当院での大腸穿孔に対する腹腔鏡手術の適応は,高度な汚染が予想される症例を除き,血圧が安定し,かつ気腹可能な症例としている.鏡視下で適切な位置にドレーンを留置し送水することで,気腹圧によりドレーンから汚染水が排出され効率の良い洗浄ドレナージが行える.2015年1月から2024年3月までに行った大腸穿孔手術のうち腹腔鏡手術で開始した71例を対象とした.
【結果】年齢の中央値は74歳で,男性40例,女性31例.原因は炎症性腸疾患(憩室炎,潰瘍性大腸炎)29例,消化管内視鏡関連10例,悪性腫瘍19例,宿便4例,外傷3例.術式は人工肛門造設が65例で行われており,そのうち4例でハルトマン手術を行った.開腹移行となったのは6例.CD分類GradeIII以上の合併症を8例に認めた.遺残膿瘍は6例であり,うち1例は持続的な穿孔を認め,再手術で穿孔部切除を行った.1例で腹直筋からの持続する出血を認め,止血,人工肛門再造設術を行った.術後創部感染は3例で認め,そのうち2例は開腹移行した症例であった.人工肛門の造設を行った65例のうち,33例で人工肛門の閉鎖を行った.また2例は人工肛門閉鎖術待機中.在院死亡は1例だが,急性期を脱し回復期に入ってからの他病死であった.術後在院日数の中央値は14日.
【結語】大腸穿孔における腹腔鏡手術は効率的なドレナージが可能で,安全に施行できる.汚染部位を鏡視下で確認し,その部位にドレーンを留置することで確実で効率的な洗浄が可能であった.また,切開創が小さいことから,汚染手術であっても術後創部感染の軽減に寄与すると考えられる.