講演情報
[P14-2-1]当科におけるBRAF V600E変異陽性大腸癌の治療経験
竹山 照明, 池田 裕一, 長谷部 行健 (汐田総合病院)
BRAF遺伝子変異は,有毛細胞白血病,悪性黒色腫,甲状腺癌,卵巣癌や大腸癌などに認められ,V600E変異がその大部分を占める.大腸癌におけるBRAF V600E変異の頻度は約10%にみられ,予後不良であることが知られている.今回,当科において BRAF V600E変異陽性大腸癌の治療を経験したので報告する.
症例は73歳,男性.当院の内科に高血圧や心房細動で外来通院をしており,便潜血陽性と排便時出血を主訴に当科を受診した.精査として下部消化管内視鏡検査を行ったところ,肛門縁より約15cm口側の直腸Rsに半周性の2型病変を認め,生検結果はGroup4(adenocarcinoma suspect)であった.cT3N1M0 cStageIIIbの直腸癌と診断し,腹腔鏡下高位前方切除術を施行した.最終病理診断はMucinous carcinoma(muc>por2>tub2),pT4a(se),N2b(8/13),M0,pStageIIIcであった.ただし,腹腔洗浄細胞診は陽性であった.遺伝子検査としては BRAF V600E遺伝子検査ならびに KRAS/NRAS遺伝子は野生型,HER2遺伝子検査ならびにMSI検査は陰性であった.
その後,術後補助化学療法としてCapeOXを6コース行った.しかし,CEA・CA19-9が上昇傾向であり腹部CT検査でも腹水の増加など癌性腹膜炎の所見を認めた.そのために,Encorafenib(BRAF阻害薬)+Binimetinib(MEK阻害薬)+Cetuximab(Cmab:抗EGFR抗体薬)にレジメンを変更し,CEA・CA19-9はともに低下傾向であり腹水も減少していった.経過中にはGrade2の手掌足底発赤知覚不全症候群を認めた.12コースを行ったところでの再評価はPDであったためにCmab単独レジメンに変更し,術後約16ヶ月で逝去した.
BRAF V600E変異陽性大腸癌の治療はtripletレジメン(BRAF阻害薬+MEK阻害薬+抗EGFR抗体薬)が2次治療から保険適応となり,BEACON試験においてその全生存期間の中央値は9.0ヶ月とされている.今回,当科における治療経験で生存期間が比較的延長した理由としては手術時に明らかな遠隔転移を認めなかった事や二次治療への移行が良好であった事が考えられた.また,希少な病態であるために,当院のような中小病院で化学療法を行う際は院内にその治療薬を余剰させない工夫が必要であった.
症例は73歳,男性.当院の内科に高血圧や心房細動で外来通院をしており,便潜血陽性と排便時出血を主訴に当科を受診した.精査として下部消化管内視鏡検査を行ったところ,肛門縁より約15cm口側の直腸Rsに半周性の2型病変を認め,生検結果はGroup4(adenocarcinoma suspect)であった.cT3N1M0 cStageIIIbの直腸癌と診断し,腹腔鏡下高位前方切除術を施行した.最終病理診断はMucinous carcinoma(muc>por2>tub2),pT4a(se),N2b(8/13),M0,pStageIIIcであった.ただし,腹腔洗浄細胞診は陽性であった.遺伝子検査としては BRAF V600E遺伝子検査ならびに KRAS/NRAS遺伝子は野生型,HER2遺伝子検査ならびにMSI検査は陰性であった.
その後,術後補助化学療法としてCapeOXを6コース行った.しかし,CEA・CA19-9が上昇傾向であり腹部CT検査でも腹水の増加など癌性腹膜炎の所見を認めた.そのために,Encorafenib(BRAF阻害薬)+Binimetinib(MEK阻害薬)+Cetuximab(Cmab:抗EGFR抗体薬)にレジメンを変更し,CEA・CA19-9はともに低下傾向であり腹水も減少していった.経過中にはGrade2の手掌足底発赤知覚不全症候群を認めた.12コースを行ったところでの再評価はPDであったためにCmab単独レジメンに変更し,術後約16ヶ月で逝去した.
BRAF V600E変異陽性大腸癌の治療はtripletレジメン(BRAF阻害薬+MEK阻害薬+抗EGFR抗体薬)が2次治療から保険適応となり,BEACON試験においてその全生存期間の中央値は9.0ヶ月とされている.今回,当科における治療経験で生存期間が比較的延長した理由としては手術時に明らかな遠隔転移を認めなかった事や二次治療への移行が良好であった事が考えられた.また,希少な病態であるために,当院のような中小病院で化学療法を行う際は院内にその治療薬を余剰させない工夫が必要であった.