講演情報

[PD4-4]閉塞性大腸癌に対するステント留置症例における術前免疫,栄養状態と予後との関連

増田 大機, 青柳 康子, 新井 聡大, 西山 優, 三浦 竣助, 金田 亮, 山口 和哉, 菅原 俊喬, 長野 裕人, 入江 工, 井ノ口 幹人 (武蔵野赤十字病院外科)
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【背景】宿主の炎症反応と癌の増殖・予後との関連については以前より報告があり,好中球/リンパ球比(以下NLR)やmodified Glasgow prognostic score(以下mGPS)は様々な癌腫の予後予測因子として報告されている.閉塞性大腸癌に対するBridge to Surgery(以下BTS)は近年多く行われているが,長期予後に関してはまだ不明な部分も多い.これは閉塞性大腸癌がOncology emergencyであり,術前の状態や緊急処置の方法が予後に大きく影響を与えるからと推察できる.今回我々は,BTSとしてステント留置を行い待機的手術を施行した閉塞性大腸癌症例の術前免疫・栄養状態と予後との関連を検討した.【対象と方法】2014年3月から2021年4月まで,当科で閉塞性大腸癌に対して術前にステントを留置し,その後根治手術を行ったStage II/III大腸癌73例を対象とした.再発予後予測因子の解析を目的に,以下の項目について検討した.臨床病理学的因子として,年齢,性別,腫瘍局在,組織型,術前CEA,Stage,再発率を,術前免疫・栄養状態の指標としてNLR,血小板/リンパ球比(PLR),リンパ球/CRP比(LCR),CRP/血清アルブミン比(CAR),prognostic nutritional index(PNI),mGPSについて検討した.NLR,PLR,LCR,CAR,PNIのcut off値に関しては,ROC曲線より算出した.【結果】年齢の中央値は73歳,男女比は39:34,StageはII:III=40:33,観察期間の中央値は640日,NLRのcut off値は4.22であった.Stage II/IIIの3年無再発生存期間(RFS)はそれぞれ72.9%,63.5%,3年全生存期間(OS)はそれぞれ91%,82%であった.多変量解析ではNLR(HR:4.328,95%CI:1.4780-12.680,p=0.008),mGPS score2(HR:6.593,95%CI:1.2130-35.840,p=0.029)が独立した予後因子として抽出された.【結語】本検討においては,NLR,mGPSがBTSを施行した閉塞性大腸癌における独立した予後予測因子であった.これらは緊急時でも簡便に測定ができ,ステント留置後の治療戦略や適正な術後化学療法の選定に寄与する可能性もある.今後症例を蓄積し,さらなる検討を行っていく.