講演情報

[P14-1-3]90歳以上の超高齢大腸癌患者に対する手術リスクの検討

占部 翔一朗, 波多 豪, 関戸 悠紀, 竹田 充伸, 浜部 敦史, 荻野 崇之, 三吉 範克, 植村 守, 山本 浩文, 土岐 祐一郎, 江口 英利 (大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学)
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【背景】
 本邦の超高齢化社会に伴い,高齢者の大腸癌手術症例は増加傾向にあるが,予備能の低下した超高齢者の手術適応については慎重に検討する必要がある.Prognostic Nutritional Index(PNI)は予後推定栄養指数であるが,術後合併症の発症リスク評価にも用いられる.今回,当院で施行した90歳以上の超高齢大腸癌患者の手術症例について,術前PNIと患者背景,手術因子,術後合併症発生率との関連性を調べることを目的とした.
【方法】2011年1月から2024年4月に当科で手術を行った90歳以上の大腸癌患者の20例を対象とし,PNI low群(<35)11例とPNI high群(≧35)9例の2群に分類し,患者背景,手術因子の関連性後方視的に解析した.
【結果】患者背景は,平均年齢92.3歳,男性9例,女性11例であった.ASA-PS 1/2/3:3/9/8例,腫瘍部位は盲腸/上行結腸/横行結腸/S状結腸/直腸:3/7/1/2/7例,病理学的病期は,StageI/II/III:6/11/3例,チャールソン併存疾患指数(CCI)の平均は3(2-5)であった.術式については,回盲部切除術/右半結腸切除術/S状結腸切除術/前方切除術/直腸切断術:3/8/2/6/1例,腹腔鏡/ロボット:17/3例であった.PNI low群とPNI high群の2群間で患者背景に有意差は認めなかった.手術成績においても手術時間(232分vs 222分,p=0.16),出血量(41.8mL vs 45.2mL,p=0.28),平均術後在院日数(18.1日vs 21.1日,p=0.11)と2群間に有意差は認めなかった.いずれの群においてもClavien-Dindo分類grade3以上の重篤な術後合併症は認めなかった.
 【まとめ】当科で施行した90歳以上の超高齢者大腸癌患者に対する腹腔鏡手術症例について後方視的に検討を行なった.本検討ではPNIによる手術成績の差は認めなかったが,超高齢者大腸癌に対する腹腔鏡手術の術前リスク評価確立のため,さらなる症例の蓄積が必要と考えた.