講演情報
[O1-1]大腸癌術後の肺転移に対するQST病院における重粒子線治療の成績
山口 有輝子, 瀧山 博年, 中嶋 美緒, 青木 秀梨, 磯崎 哲朗, 黒崎 宏貴, 篠藤 誠, 山田 滋, 若月 優, 石川 仁 (量子科学技術研究開発機構QST病院)
大腸癌術後の遠隔転移の有無は予後を規定する重要な因子である.従来,遠隔転移が確認された時点で,画像検査で視認できる病巣以外にも微視的な病変が存在することが必然と考えられ,systemic chemotherapyを行うことが一般的であったが,最近では「がんが全身に転移する前の少数個の転移のみが存在する状態」,いわゆる「オリゴ転移」の概念が提唱された.オリゴ転移巣に対する適切な局所療法を加えることにより予後が改善するとの報告もあり,肺転移に対する定位放射線治療は保険診療として行われてきている.重粒子線治療は,先進医療として様々ながんのオリゴ肺転移に治療が行われてきたが,とくに放射線抵抗性とされる大腸癌の肺転移においては,安全性だけでなく有効性が期待されている.本研究では,1997年5月から2022年10月まで当施設で大腸癌術後オリゴ肺転移に対して重粒子線治療を行った55症例について解析した.重粒子線治療の適応は,原発巣も含めて肺転移以外の病変が存在しないこと,肺転移3病変まで,かつ手術不能例(患者拒否を含む)であり,遠隔転移に対する根治治療の既往の有無は問わないこととしている.照射線量・分割回数は主に60Gy/4分割が用いられた.観察期間の中央値は29.5カ月で,2年生存率67.4%,2年局所制御率74.7%であった.肺への放射線治療において最も頻出な有害事象は放射線性肺臓炎であるが,今回の症例ではCTCAE(Version5.0)におけるGrade3以上の肺臓炎は認めなかった.これらの結果は,定位放射線治療に関する複数の既報と比較しても劣らず,重粒子線治療も肺転移に対する局所放射線治療の選択肢の1つとなると考えられた.